いずれは「海外でも上映したい」
――八木さんはこの2作を通じて、日本伝統の捕鯨文化が圧力を受けて衰退していった状況を知り、愛護活動の矛盾点や鯨食の魅力を伝えるエキスパートになられましたね。改めてご自身のこの2作についてどう思われますか?
八木 1作目の時は、私のPCがハッカー攻撃を受けたり、反捕鯨団体から嫌がらせを受けたりして、非常につらい経験もしました。しかし、1作目がNetflixで世界公開されると、世界中の方々から激励のメールをもらうようになりました。
「捕鯨に関して日本人の意見を初めて聞けた」「私はこれまでシー・シェパードに寄付していたけど、あなたの映画を見てから逆の立場になった」「ただ、ただ、アメージングな映画」など素直にメッセージをつづってくれました。イルカ漁が行われている和歌山県太地町で、漁師たちがのどかな生活を送っている風景は、「密猟」や「クジラを残虐に殺害する民」とはまったく違うイメージを世界中の観客に与えたようです。ロンドンで映画賞をいただいた時も、「あなたの映画のパッションが最も良かった」という評価もいただきました。
1作目は身と心を削って、リスク覚悟で、走り抜けて作ったという感じですが、ちゃんとメッセージを込めれば、世界の方々にも真意が伝わるということもわかりました。反捕鯨の風潮は確実に下火になっているのを肌で感じます。今回は嫌がらせもまったくありませんね。
私は子供のころから遊び相手は男の子ばっかりで、女であることが面倒くさくって(笑)、化粧したりストッキングを履くのもいやでしょうがないと思っていました。そんな私が今回、この映画を作って初めて女性に生まれてきた意味があったのかもと心から思うようになりました。現場に入ると、捕鯨の世界って悪しき男性社会の風潮みたいなところがあって、私みたいな能天気そうにみえる女性だからこそ、ぐいぐい中に入っていって問題の種を指摘できたのかもと思います。
シー・シェパードも私が男性だったら、他の追及の仕方をしただろうし、おじいちゃんやおばあちゃんも私が女性だからインタビューに応じてくれたような側面もあると思います。クジラをめぐる業界にも新しい感覚を身につけた女性が必要なんではないでしょうか?
――タイトルは「鯨のレストラン」と名付けましたね。
八木 最初は、大将の谷さんのことをもじって「大将はクジラの夢を見る」というタイトルにしようとも思ったのですが、英語名にすると少しわかりにくくなってしまう。ですからシンプルに『鯨レストラン』(英語名 WHALE RESTAURANT)にしました。
これまでの映画館の観客はシニア層が多いのですが、多くの若者たちにも見てもらいたいと思っています。
これは「国」の仕事だよね、と声をかけられますが、前作では、自分の全財産や多額な借金をして世界中を歩きまわりました。資金があれば、また新作『鯨のレストラン』も海外でも上映会に赴き現地で、話し合い理解を深めたいと思っています。
前作で反捕鯨活動家の幹部たちとも闘ってきた末に、世界中へNETFLIXさんで配信され、海外の大学などでも取り上げられ、十分な海外への反捕鯨対策になっていると自負がありますが、なかなか今でも資金面でもハードルが高く、難しい状況にあります。どなたかアドバイスや支援をいただけたらとても嬉しいです。