税収増で財政規律が緩んでいる
図1は、1990年代から現在までの税収と歳出の動きを示したものである。ただし、ここでは歳出のうち国債償還費は除いている。借金の返済は支出ではなくて貯蓄だからだ。
家計が住宅ローンを償還したら、誰でも家計の財務状況は改善したと考えるだろう。国の場合も同じことだ。だから、償還費は、歳出のなかに入れるべきではない。
図1を見ると、3つのことが分かる。第1に歳出と税収の差、財政赤字は縮小気味であるということである。財務省は、これが拡大傾向にあることを「ワニの口」と呼んでいるのだが、「ワニの口」などどこにもない。
第2は、税収の伸びは著しいということである。特に2021年、22年の伸びは急激である。21年度の税収は67兆円、22年度の税収は71.1兆円である。この勢いは23年も続きそうである。
第3は、税収が増えたから歳出削減に熱心でないように見えることだ。20年、21年の歳出増は、コロナの非常事態だからやむを得ないが、コロナが終われば平常状態に復帰すべきものである。ところが、復帰しているようには見えない。
筆者には、税収が増えたので、歳出の削減に真剣に取り組んでいないように見える。であれば、必要なのは減税である。入ってくるお金が少なくなれば、歳出の削減に真剣になるだろう。
日銀の低金利政策で、政府が資金調達をしやすくなるので財政規律を低下させるという議論がある。借りやすくなるから政府が無駄遣いしやすくなるのは事実かもしれないが、であれば、増税して財政が楽になっても無駄遣いをするだろう。これが現在、実際に起きていることである。