2022年度の税収が決算ベースで71兆1373億円となり、20年度から3年度連続で過去最高を記録している。しかし、22年度は同時に赤字国債が41兆7519億円発行されており、相変わらずの借金財政が続いていることに変わりはないのもまた事実である。
PB黒字の達成も視野に
しかしながら、こうした税の好調な自然増収を受けて、内閣府「中長期の経済財政に関する試算(令和5年7月25日経済財政諮問会議提出)」によれば、長らく財政再建目標の一つとされてきたプライマリーバランス(PB)の黒字化が目標の25年度より1年度遅れるものの、26年度に達成される見込みと試算されている(ただし、このプライマリーバランス黒字化は、より楽観的な経済見通しである「成長実現ケース」に限ったものであり、より現実に近い「ベースラインケース」では2023年度までの推計期間中には黒字化は達成されない)。
仮に、2026年度にプライマリーバランスの黒字化が達成されれば、実に1993年度以来30年以上ぶりとなる。
日本では、これまで財政再建の必要性が叫ばれはしたものの、いかにして財政を健全化するかに関しては、歳出・歳入の構造改革(多くは増税)によるか、経済成長による税の自然増収(財政配当)によるか、路線対立が続いてきた。現状のトレンドがこのまま続けば、財政配当による財政再建が実現できそうな勢いだが、実は、そう単純な話でもない。
財政政策の判定基準
歳出や税収を一定に保ったままでも、景気が良い時には税収が増加する一方、失業給付等の社会保障給付は減少する。つまり、財政収支は改善する。
反対に、景気が悪い時には税収は減少し、失業給付や生活保護等の社会保障給付は増加する。つまり、財政収支は悪化する。
要するに、現実に財政黒字もしくは財政赤字が発生しているからといっても、それは経済対策などの実行に伴う裁量的財政政策の結果によって生じたものではなく、経済活動の結果生じた財政黒字や財政赤字であるかもしれない。つまり、現実に財政黒字(赤字)が発生しているからといって、現在の財政スタンスが緊縮的であるか拡張的であるかを判断するのは適切ではない。
そこで現実の財政収支によってその時々の財政スタンスが景気に対して緊縮的か拡張的かを判断するのではなく、完全雇用財政余剰(財政余剰とは財政黒字を意味する)という概念が最も広く、また最も早くから使われてきた。完全雇用財政余剰(完全雇用財政赤字)というのは、税や支出に関する制度や構造がある中で、マクロ経済が完全雇用水準にある場合に発生するであろう財政黒字(赤字)のことを指す。
財政収支の変化は、政府支出の拡大や減税政策など裁量政策(経済対策)によって変化する部分と、裁量政策によって引き起こされる所得の変化に伴い変化する部分の総合として捉えることができる。完全雇用財政余剰は、この2つの効果に分解して理解することを意図している。
経済対策そのものによる部分とは、税率の変更や政府支出額の変更によってもたらされる財政収支の変化であり、直接的な効果である。一方、GDPの変化による部分は、経済対策がなかったとしても、GDP水準が変化することで誘発される部分であり、一般的には、ビルトインスタビライザーと呼ばれる。
以上の点を簡単な例で説明してみよう。