このように、現に発生している財政赤字が、完全雇用財政赤字=構造的財政赤字を含む場合には、景気が回復すれば勝手に財政赤字が消滅する類のものでではなく、意図的に財政再建を行って積極的に財政赤字を削減していかなければならないのだ。
日本は緊縮財政というウソ
では、現在の日本の財政スタンスはどのように評価できるのだろうか。いま、国際通貨基金(IMF)「Fiscal Monitor」により、日本の構造的財政収支(一般政府ベース)の動きを見ると(図3)、1994年以降、一貫して赤字で推移していることが分かる。
つまり、日本の財政赤字は景気が回復し完全雇用GDPを達成したとしても解消されないのだから、現在の日本政府の財政スタンスは緊縮財政ではなく放漫財政が続いている。ハッキリ言えば日本の財政は緊縮財政というのは全くのでたらめなのだ。
中には、IMFは財務省からの出向者がいるから、とにかく緊縮財政を進めたい日本政府に有利な推計がなされていると批判する読者もいるかもしれないので、図3で経済協力開発機構(OECD)の推計を見ても状況に違いはないことが確認できるだろう。
さらに、労働政策研究・研修機構「統計トピックス 均衡失業率、需要不足失業率」(ユースフル労働統計フォローアップ)によれば、日本は15年第4四半期以降、需要不足失業率が解消されている(ただし、コロナ禍の20年第3、4四半期は除く)という意味で完全雇用が達成されているにもかかわらず、やはり財政赤字が発生している。現在の日本の財政赤字は完全雇用財政赤字であり、緊縮財政ではない。
日本は、完全雇用が実現されたとしても、あるいは現に完全雇用が達成されているにもかかわらず財政赤字が発生しているという意味で完全雇用財政赤字が常態化しており、放漫財政となっている。
以上のように、日本の財政は緊縮財政ではなく、真逆の放漫財政なのだ。これ以上の財政刺激策は不要である(なぜなら図2(下段)で言えば予算線を下方にシフトさせ財政事情を悪化させてしまう)どころか、財政の持続可能性を考えるうえでも有害であり、必要なのは一刻も早い財政再建策なのだ。