実は着実に増えている税収
図2は、歳出と歳入の対名目GDP比を示したものである。分母の名目GDPが伸びているので、財政赤字はなおさら縮小しているように見える。
また、歳入の対GDP比は上昇している。アベノミクス以前の12年度の8.8%と比べると、22年度には13.0%と4.8%ポイントも上昇している。
これだけ上昇したのは、もちろん消費税増税をしたからであるが、消費税1%でGDP0.5%分の増税である。食料品等の軽減税率を考えると、消費支出の4分の1が食料品への支出だから、軽減税率の部分は0.5×3/4=0.375%となる。5%消費税増税で税収の対GDP比は、0.5×3+0.375×2≒2.3%ポイント増加する。
残りの2.5%(4.8-2.3)分は所得が増えて累進課税の税率区分が上がったからであり、また、法人税収が増加したからである。日本企業の6割以上が赤字であるが、これは、そもそも節税目的の中小法人が多いので当然のことである。
ところが意外なほど景気が良くなれば、節税に失敗して黒字になり、法人税を払うことになる。もちろん、黒字を目的としている企業の利益も増加して、法人税も増加する。
GDPはすべての給料と利潤を足したものであるから、税収の対GDP比が上昇しているとは増税しているのと同じである。この増税は国民に還元しなければならない。池田首相はそうしていた。池田首相を尊敬する岸田首相がそうするのは当然だ。
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