2024年7月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年11月2日

 中国プラスワン戦略について、代替地は容易に見つからず、例えばアイフォンのインド生産は品質管理や効率性などの問題に直面しているものの、多様化は進めていくべきだろう。多様化は、企業が通常行ってきたリスク管理である。

 中国事業の分離は、結局中国撤退になるか、中国を利益することになるように見える。社説は、「分離された中国部門はグループ企業の監督から分離され、中国の政府からの影響にもっと脆弱になり、中国の不透明なビジネス方法に呑み込まれる危険もある」と指摘する。

 分離は、製造業等では難しいだろう。それは限りなくデカップリングの中国撤退に等しくなるか、あるいは却って中国を益することになるかもしれない。

 大事なことは、西側政府が関係企業に対して、①全面的な対中デカップリングを求めているのではないこと、②規制されるのは、安全保障に関係する一部のセクターや取引に限定されること、③対中貿易経済関係の大部分は無害な自由取引に任されることを明確にすることではないか。また中国等に対しそのようなナラティブを発していくことではないか。

注目される米中首脳会談

 こうした諸点は、米国のイエレン財務長官や恐らく最近訪中したレモンド商務長官が中国に伝えたことだろう。これらの意味するところは、問題の局地化を図るということである。もちろん、その際、中国による自由な国際貿易経済の悪用は許さないことも明確に伝えておくべきだろう。

 その意味で、11月に予想されるジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会談の機会に行われるという米中首脳会談に期待したい。目下、双方で事務的な詰めが行われているものと予想される。

 重要なことは、出来るだけ市場の力を大事にすること、企業の力と判断を尊重することであろう。他方、安保規制で企業に法令違反等があれば厳しく対処しなければならない。

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