フィナンシャル・タイムズ紙の9月29日付け社説‘For business, breaking up with China is hard to do’が、ビジネスにとり中国との離反は難しい、企業は西側の対中政策についてもっと明確な方向性を必要としていると述べている。主要点は次の通り。
9月に野村香港の幹部が中国により出国禁止になった。これは海外企業にとり中国の環境がどれほど予測不能になったかを示すものだ。
中国による外国企業への監視強化は、地政学的緊張によるデリスキングを求める本国政府の圧力やパンデミックによる脆弱性削減の圧力に追い打ちをかけており、多くの企業は、一部拠点の海外移転あるいは中国事業の分離をしようとしている。
しかし、ビジネスにとり中国との離反は難しい。
一つの選択肢は、「中国プラスワン」戦略、つまり中国の工場を維持しつつ、新たな投資はインドやベトナム等東南アジア諸国に向けることだ。しかし、これには品質管理や効率等の問題がある。
もうひとつのトレンドは、「中国のための中国」戦略、つまり中国での経営を巨大な中国国内市場向けに限定するように再構築することである。しかし、中国向けビジネスと非中国向けビジネスのために別個の供給チェーンを作ることには、不可能ではないが、コストがかかる。しかも、分離された中国部門はグループ企業の監督から分離され、中国の政府からの影響にもっと脆弱になり、中国の不透明なビジネス方法に呑み込まれる危険もある。
外国企業には、中国リスク軽減のための容易な選択肢がほとんどない。米欧の政府は、自分たちの目まぐるしい立場の変遷が関係企業にビジネス上ストレスを引き起こしていることを認識すべきだ。
長期的計画策定に当たって、企業の取締役会は対中政策の方向についてもっと明確なことを必要としている。対中デリスキングは、不可避かもしれないが、それは迅速にはいかないし、簡単でもない。
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企業にとり現在の選択肢は、「中国プラスワン」か「中国事業の分離」かの択一のようだが、企業が難しい選択に直面していることは容易に理解される。社説は、「対中デリスキングは、不可避かもしれないが、それは迅速にはいかないし、簡単でもない」と言うが、デリスキングの必要性自体は否定していない。