2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月2日

 南シナ海における領有権問題には、5カ国のASEANの主権国家が関係している。この問題の解決のためには、多国間の国際的仲裁による解決が望ましいが、中国は自らの力を背景にASEAN各国との一対一の交渉に持ち込もうとしているようである、と論じています。

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 南シナ海問題を典型例として取り上げ、中国の領土、主権に関する伝統的概念が、他の国々のものと如何に異なっているかを見事に分析した論文です。朝貢・冊封の概念と近代「国民国家」の主権の概念の二つを組み合わせ、中国は自らの対外政策にとって最も都合の良いようにこれらを解釈している、という論者の指摘は正鵠を射たものです。

 南シナ海については、蒋介石政権が行っていた主張を共産党政権が引き継ぎ、やがて軍事力が備わってくるにしたがって、現実の実効支配に乗り出すという構図です。最近、中国はフィリピンの反対にもかかわらず、スカボロー礁にコンクリート・ブロックを設置し、一方的に実効支配に動き始めたと伝えられています。また、フィリピンが本件を海洋法裁判所に提訴したことを不満として、中国はアキノ大統領の訪中を断りました。

 東シナ海の尖閣をめぐる中国の対応も、領土・主権についての独善的解釈という点では、南シナ海問題への対応と、何ら変わるところがありません。ごく最近、中国の公的メディアや一部学者までが、尖閣のみならず、「沖縄(琉球)も日本の領土ではない」、などと宣伝戦を始めました。そのことについては、日本として警戒し、反論する必要があります。

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