米MIT准教授のテイラー・フラベルが、8月15日付ディプロマット誌ウェブサイトに、「中国の海洋紛争について見逃されている習近平発言」と題する論説を寄せ、習近平は鄧小平路線を継承しており、彼を民族主義的強硬派というのは言い過ぎで、中国の海洋紛争への対応はより微妙なものである、と論じています。
すなわち、7月末中国共産党政治局は、海洋国家としての中国についての会議を開催した。中国メディアは、海洋大国になることを呼びかけた第18回党大会の政策を繰り返した習近平の演説について、もっぱら報道している。
しかし、習近平のもっとも興味深い発言は、あまり注目されていない。演説の終わり近くで、習は海洋紛争に言及し、核心的利益の擁護を繰り返した後、二つのことを言った。これは、東および南シナ海で日本や東南アジア諸国と深刻な外交上の問題を起こしている中国の強硬行動のメリットについて、中国政府が見直していることを示唆している。
第一に、習はスプラトリーや尖閣・釣魚島のような領土問題についての鄧小平の12文字ガイドラインを繰り返した。鄧小平は1979-1984年、一連の発言で、「主権は我々のもの、紛争棚上げ、共同開発追求」と、後にまとめられる穏健な政策を示した。最近、中国の学者はこのアプローチのメリットを議論し、鄧小平指示は中国に対する主権侵害を防止してない、と批判してきた。「主権は我々のもの、紛争状態の維持、開発するイニシャティブ発揮、危機管理・統制強化」と置き換えることを提案した学者もいる。
しかし、習近平は鄧小平の立場を確認した。党の路線を示して、習近平は中国内部での論争に対処した。これは、海洋紛争において北京は忍耐深く、一時的な緊張緩和に前向きであることを示しており、海洋紛争で中国が忍耐心を失ってきているとの考えを否定する。
第二に、習は、安定の維持と権利の擁護の二つの状況に対応しなければならないと述べた。これは、地域の安定と中国の海洋権益に同等の重要性を与えているように見える。中国の指導部は、例えば軍事費増強を経済発展の枠内にとどめる場合や、国内での対外投資奨励が外国での中国のイメージを損なう場合に対処する際、同じような言い方をしてきた。
習は演説で、海洋権益保護と地域安定が競合することを指摘した。これは、海洋での自己主張が他の利益を害していると中国政府が認めていることを示している。米国は、尖閣に安保条約5条を適用すると言い、南シナ海にも関与し、日本は、巡視船を比に提供するなどしている。権利主張と地域安定という二つの利益をバランスさせるのは容易ではない。国家海洋局の新しい沿岸警備隊がどうするのかで、このバランスをどう取るか、明確になろう。