2023年12月8日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年11月17日

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中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)『日本の「中国人」社会』(日本経済新聞出版社)、『いま中国人は中国をこう見る』(日経プレミアシリーズ)、『中国人が日本を買う理由』(日経プレミアシリーズ)などがある。

インフルエンサーの影響も下降ぎみ

 以前は盛り上がったセールも、こう毎年続くと食傷気味になるのは当然だろう。経済の悪化で、「購入できる人」と「購入できない人」が明確に分かれ、それがSNSですべて明白になってしまうため、白けてしまうのではないかという気がする。

 そこで、苦境に立たされつつあるのがインフルエンサーの存在だ。中国の有名インフルエンサーといえば、かつて「ライブコマースの女王」と呼ばれた薇婭(viya)氏が思い浮かぶが、彼女は中国政府の「共同富裕」政策の影響を受け、21年、脱税で約13億4000万元(約240億円)の罰金を支払わされて、表舞台から姿を消した。大手IT企業なども同様だが、儲け過ぎた企業や富裕層が政府の槍玉にあがるようになったのだ。

 中国には有名タレントと同等か、それ以上に稼ぐインフルエンサーが多いが、アルバイト的に副業でインフルエンサーを行う人も多く、数年前からライブコマース(ライブ配信の商品紹介)という手法を使って、人々の注目を浴びてきた。商品を写真で見るよりも、ライブ配信ならば多角的に商品を見ることができ、インフルエンサーが実際に使用感などを軽妙なトークで伝えるため、わかりやすく、通販の売り上げが伸びたのだ。

 しかし、あまりにもインフルエンサーの数が増えすぎ、これまで人気だったトークにも陰りが見え始めた。今年9月、中国で最も有名なインフルエンサーの李佳琦氏がライブ配信中、中国メーカー「花西子」の化粧品(アイブロー)の説明をしていた際、視聴者から「高すぎる」というコメントが寄せられた。

 李氏はすぐさま「どこが高いっていうの? あなた、まじめに働いているの?」と批判。これがネット上で大炎上し、李氏は涙ながらに謝罪するという事件があった。

 中国のトップインフルエンサーには世界中の企業から商品の宣伝依頼が持ち込まれるが、採用されるのはごくわずか。インフルエンサー側に強い権限があるが、超富裕層であるインフルエンサーの傲慢さが見え隠れする機会が増え、消費者側に不信感のようなものが生まれてきている。こうした状況もあり、もはや「独身の日」だからといって浪費しない、という冷めた気持ちになっている中国人が少なくないのではないだろうか。

   
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