2024年12月4日(水)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2023年12月7日

カギ握るパレットの運用

 これまで述べてきた通り、コストコ社のロジスティクスは米国式ロジスティクスをベストプラクティスとしてでき得る限り日本で再現しようとしている面と、日本の環境に適応している面の両面があるが、それを裏から支えているのが米国式のパレットの運用である。

 コストコ社が日本で使用している全てのパレットは、48インチ×40インチの米国サイズの4 Way(四方刺し)パレットである。コストコ社は、木製パレットで1社、プラスチックパレットで2社のパレットレンタル会社と契約しており、各ベンダーにもこれらパレットレンタル会社と契約の上、全ての貨物を48インチ×40インチの米国サイズの4 Way(四方刺し)パレットに搭載の上納品することを義務付けている。

写真7:コストコ社市原物流センター庫内フロアを占めるパレット貨物

 また、物流センターから各倉庫店にトレーラーで配送される貨物についても、全てパレットに搭載することが原則となっており、多くの場合ベンダーでパレタイズされ納品されてきたパレットがそのまま倉庫店にも配送されている。

 このように、ベンダー⇒コストコ社物流センター⇒同社倉庫店の間で一貫パレチゼーションが行われ、コストコ社の社員が荷役作業を行っているからこそ、台切りができない単車でベンダー納入が行われていても、ドライバーには長時間の手待ちも荷役も発生しないのである。

導き出される物流「2024年問題」対策の要諦

 ここまで読み進んでこられた読者の方々は既にお気づきと思うが、コストコ社の日本におけるロジスティクスは、物流の「2024年問題」に対応していくに当たっての示唆に極めて富んでいる。

 筆者としては、これまで主張してきた通り、ドライバーを手待ちや荷役から本質的に解放するという意味で、中長期的には日本でも欧米のようなトレーラー輸送の普及が不可欠であると考えている。コストコ社市原物流センターを中心とするロジスティクスは、これまで日本の多くの物流関係者が不可能、あるいは極めて困難と考えてきたトレーラー輸送の日常的運用が現実として可能であることを明らかに証明している。

 しかしながら、直前に迫った物流の「2024年問題」に短期的に対応していくためには、コストコ社がベンダー納入について行ってきたように、荷主が事前予約制を導入し約束した時刻や時間帯を確実に守ること、一貫パレチゼーションを導入し荷主が積み降ろしの荷役を行うことであるだろう。それがトラックドライバーの手待ち時間と荷役時間を改善し、日本のトラック運送事業の生産性を向上させ、ひいてはこの問題をソフトランディングさせるための要諦となると考える。

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