ちなみに日本では、カタクチイワシの漁獲枠さえありません。稚魚のシラスは日本人の大好物ですが、これも枠はありません。カタクチイワシの漁獲量は年間10~20万トン程度(22年13万トン)で、シラスが年間4~6万トン(22年4万トン)が漁獲されています。
ペルーでは、環境の変化に応じてTAC(漁獲可能量)を設定して、ITQ(譲渡可能個別割当)により資源管理を行って漁業が行われています。
世界に学ばない日本
現在、わが国ではカタクチイワシのTACを設定しようとしています。しかしながら、世界の資源管理の成功例がほとんど伝わっていません。一方で、日本と海外は違うなどと、資源管理に関する誤った情報が出回ってしまっているために、もう少しのところで苦戦しています(23年12月現在)。
まずTACの設定は最低限必要です。そしてTACを漁業者や漁船ごとに分けて行く、IQ(個別割当)が必要になります。
TAC設定の際には、資源管理に効果が出ない、獲り切れないザル枠に決してしないことです。さもなければ将来にとっての巨大な負の遺産となり、その後必ず「なぜこんな枠にしたのか」と後悔の念に駆られることになります。既にそうなりつつありますが、時計の針は元に戻りません。
科学的根拠に基づく水産資源管理が進まなければ、いくら大漁祈願しても、水産資源はこのまま確実に減って行きます。そしてその影響は、確実に漁業者だけでなく水産加工業者やその関係者、そして消費者にも悪影響を及ぼします。
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