2024年5月14日(火)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年12月28日

 サバ類(マサバおよびゴマサバ)の漁獲枠は、2020年の漁期(7月~翌6月)太平洋と日本海(対馬暖流系群・東シナ海系群)に分けられています。これは、資源が異なるので最低限必要な処置です。

(出所)水産研究教育機構 写真を拡大

 しかし数字を見るとすぐ問題がわかります。22年の漁獲枠が漁期中に12万9000トン→14万3030トンへと11.9%増えており、実績は14万1931トン。漁獲枠に対する実績は99%となっています。これは、言い換えると漁模様が良くなったので期中で枠を増やしたということです。過去に何度もありますが、漁獲枠というゴールポストが動かされてしまうのです。

 一方で、ノルウェーのサバ漁では事情が異なります。漁期中に漁獲枠が増える等ということはまずありません。途中で枠が増える(ゴールポストが動く)可能性があるのなら、漁業者はせっせと幼魚でも何でも獲って、枠の追加を待つ姿勢になってしまいます。

 ちなみに22年の同時期のサバ類の太平洋系群の漁獲枠は50万9000トンに対して、わずか13万6588トンの漁獲量で27%の実績しかありません。太平洋側でもサバは見つけたら獲る状態になってしまっているので「成長乱獲」が避けられず資源が減少してしまいます。

ペルーのアンチョビ(カタクチイワシ)漁に学ぶ

 ペルーのカタクチイワシはわが国にとっても大事な輸入原料です。魚粉や魚油に加工されて養殖用のエサに使用されるだけでなく、魚油はDHA/EPAを含んでいるので健康食品の原料としても利用されています。

カタクチイワシ(筆者提供)

 前述したように、23年はペルーのアンチョビ(カタクチイワシ)が第一漁期(例年4~8月)中に未成魚の比率が80%を超えたとして禁漁しています。ペルーは109万トンもの枠を約2割消化しただけで、将来の資源を考えて禁漁したのです。同国は世界の魚粉生産の20%強を占めており、これが世界の魚粉・エサ向け相場を引き上げる要因になっています。

 日本のカタクチイワシの資源より、はるかに多い資源量なのに「禁漁」。ノルウェーやアイスランドのシシャモ(カラフトシシャモ)も同様ですが、資源の持続性(サステナビリティ)を考慮して一時的に禁漁して、その後にV字回復しているケースはよくあります。ほとんど獲れなくなっている秋田のハタハタが回復例と誤解されている方は少なくないですが、皮肉にも日本では見かけないケースです。

 ペルーのアンチョビには、第一漁期での禁漁から、同年の第二漁期(例年11月から翌1月)では168万トンの枠が発給されています。未成魚混獲率による部分禁漁などの要因がありますが、漁が行われています。


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