水産業の成長を止める漁獲枠
下の2つの表の折れ線グラフを比べてみて下さい。日本のサバの漁獲可能量(TAC)と実際の漁獲量に乖離があることがわかります。一方でノルウェーサバの場合は、2つの数字はほぼイコールです。
筆者は20年以上に渡り、毎年ノルウェーサバの買付シーズン中に、TACの通り漁獲されるサバの水揚げを目の当たりにしてきました。買付では、サバがTAC通りに獲れることは大前提でした。一方で、国内のサバ漁においてはTACが大きすぎて、参考にも資源管理にも役立たないことも見てきました。
国産サバを長年買い付けてきた国内の水産加工業者にとっては、漁獲量がどうなるかはその年にならないとわからないという感覚でした。これがノルウェーサバの輸入業者にとっては、漁獲量はTAC通りであり、買付時期の前年の発表時から分かっているというのが当たり前です。
前者の日本の場合は資源管理にTACの効果が出ません。価値が低く、将来の資源にとっても悪い幼魚も何でも見つけたら獲ってしまいます。ノルウェーのように小サバの漁獲は避け、価値が高い時期のサバの成魚しか獲らない漁業とは、全く異なる漁業をしています。
このため、世界的な水産物の需要増加を背景に、成長している水産業がわが国の場合は、成長どころか衰退する一次産業という事態に陥ってしまっているのです。
なおこれは、サバの幼魚を獲る漁業者が悪いのではありません。未成魚まで獲らせてしまう大きなTACを設定してしまう根拠を出してしまうことと、それによってできる制度が大きな問題なのです。
日本海・東シナ海でも未成魚の乱獲が進む
2024年の3月までの予想で、東シナ海や日本海のマサバの来遊量は前年並みといわれています。しかしながら、漁獲されるサバのサイズは25~26センチの0歳魚や28~32歳の1歳魚が主に漁獲されるほか、日本海では32センチ以上の2歳魚以上も漁獲されるという予報です。
これは、ほとんど食用に向かない「(例年通り)ローソクと呼ばれるサバの幼魚の成長乱獲をする」という意味に他なりません。資源が豊かなノルウェーをはじめとする北欧諸国では3歳未満のサバの幼魚は、漁船ごとに厳格に枠が設定されているため、価値が低い幼魚は、漁業者自ら漁獲を避けるので、漁獲されません。そして漁獲を逃れたサバは成熟して産卵し、資源が安定していきます。