2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年1月17日

 第二次世界大戦からの歴史は、中国が伝統的な経済規模世界一という地位に返り咲くプロセスと言えなくもない。そして、それは、おそらく今後10年以内の2030年代前半に起こりうる。

 西暦1年から2006年までの世界主要国の国内総生産(GDP)の世界全体に占める割合を大胆に推計したことで知られる英国の経済学者アンガス・マディソンによれば、中国が経済規模(PPPベースのGDP)で米国に抜かれ世界1位の座から滑り落ちたのは、アヘン戦争後の1880年頃。そして、米国のGDPの世界に占める割合がピークに達した(同時に、中国の割合が底を打った)のは第二次世界大戦直後の1950年頃でそれ以降は、米国の割合が漸減し中国の割合が漸増し、いずれ、これが再逆転する流れだ。

 PPPベースでは既に逆転しているとの見方もあるが、名目GDPについても2030年代に逆転が起きれば、これは大げさに言えば、1880年から150年かけた中国のカムバックだ。

 さて、以上を背景に第二次世界大戦終了後から冷戦終了までは、米国一人勝ちの世界と言って良いだろう。米国は、その存在だけで世界をリードできた。

 転機はやはり2001年の米国同時多発テロだろう。全世界が唯一の超大国の「脆弱性」を目撃したのだから。それでも、GDP(米30.1%①、中3.5%⑥、日14.6%②)、国防費(米43.1%①、中3.0%⑥、日6.1%②)共に、米国は図抜けた超大国だったが、世界的課題の変質(テロ、気候変動等の地球規模課題)で、存在だけでは不十分なだけでなく、一人では対応できなくなった。

 要は、「助けを必要とする唯一の超大国」になったのだ。米国が「バーデン・シェアリング」を言い出したのはこの頃だ。新たな現実に直面し、可能な範囲で同盟国による責任の分担を求めた訳だ。

 もう一つの転機は2010年だ。中国のGDPが日本を抜き、その後2位が指定席となる(米22.6%①、中9.1%②、日8.7%③)。国防費(米44.8%①、中6.4%②、日3.3%⑤)においても、中国は08年以降常に第二位を占めている。

 要は、「中国の超大国の仲間入り」の始まりだ。そして、その後、経済規模の急速な拡大で、中国が存在でリードするという伝統的傾向をたどる。

紛争を一人では止められない

 そして、現在も、経済規模(米25.4%①、中17.8%②、日4.2%③)、国防費(米39.7%①、中13.2%②、日2.1%⑨)の双方で米国は唯一の超大国と言って良い。意思さえあれば、世界をリードできるのだが、米国は国内分断をも背景に疲れており、意思が揺らいでいる。

 オバマが「われわれは世界の警察官であるべきではない」と発言した13年9月から23年で10年経った。それを同盟国・同志国の拡大で補っている、正に「チャレンジ・シエアリング」の時代なのだ。

 国際紛争への対応との関係では、挑戦の共有とは共同責任を意味する。紛争を一人では止められないとは、紛争を終わらせるのが従来に比べ一層難しいことを意味する。

 24年の米国大統領選挙で米国の外交政策は変わり得るのか。同盟国の日本としても注視して行かなければならないだろう。

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