フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのエドワード・ルースが、12月6日付け同紙掲載の論説‘The world cannot hedge against Donald Trump’で、トランプにヘッジを掛けることは不可能であり、彼のような独裁政治に傾く人物が大統領に復帰すれば欧州やアジアの民主主義国にとっては全てが変わるだろう、と述べている。主要点は次の通り。
・トランプの復帰は最初の任期よりももっと悪いものになる。
・トランプの狙いは、独裁政治だ。
・短期的なヘッジでは足りない。世界は、米国が「永遠に」変わったと受け取らねばならないだろう。
・プーチンと習近平は、トランプの勝利を彼らの課題の推進への青信号だと考えるだろう。
・米国の同盟国は、米国がもはやこれらの国の安全保障を保証することのない世界に適応していかねばならならない。
・トランプの10%均一輸入関税計画は、開かれた世界貿易体制とは程遠い貿易体制になる。
・パックス・アメリカーナからの退出に対する懸念すべき保険は、核保有への急速な拡大である。日韓豪は数カ月で核保有できるし、ドイツも可能性がある。イランから、サウジアラビア、トルコ、エジプトにも波及し得る。
・米国の同盟国のもうひとつの選択肢は、修正主義国家への接近だ。独仏の対ロ宥和が想定し得る。ロシアへの宥和は、欧州防衛連合結成よりも可能性が高い。
・欧州諸国は、アジアの同盟国に比べれば、遥かに深い相互協力の習慣を有している。また、ロシアへの対抗は、中国に対するよりは容易だろう。しかし、トランプが勝利すれば、すべてが変わる。
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このルースの議論は興味深い。大統領選挙の世論調査は、共和党はトランプが圧倒的に強いことを示している。本選挙についても、6の接戦州でトランプは強く、バイデンがリードしているのはウィスコンシンだけだ。これから1年何が起きるか分からないが、トランプ再選となる場合の対処につき日本も種々検討しておくことが必要である。