11月30日、ネオコンの論客として有名なロバート・ケーガンはワシントン・ポスト紙に「トランプ独裁政治は不可避になっている。われわれはもう偽りは止めるべきだ」(A Trump dictatorship is increasingly inevitable. We should stop pretending.)と題する長文の論評記事を掲載している。その中で、トランプが再選されれば、それは独裁政治やリベンジの政治になる等と警告した。この記事は大きな反響を呼んでいる。
ケーガンはその1週間後の12月7日、第二弾の記事「トランプ独裁政権:如何に阻止するか」(The Trump dictatorship: How to stop it)を掲載した。「前の週の記事につき、一部読者が解決策を提示していないとして不満を述べた」として、幾つかの解決策を提示している。
第一段階として、ニッキー・ヘイリーを中心に共和党内の反トランプ勢力を結集する。トランプは「当選できない、受け入れ難い候補者」であることを前面に打ち出す。ヘイリーが直接やることは難しいだろうからロムニーやマコネル等重鎮が「勇気をもって」発言する。そして有権者の大衆運動を起こすことを提言する。
ルースの論説に戻ると、彼の議論の中で、米同盟国等の核保有への急速な拡大が起きるとの点については、十分注意しなければならない。特にサウジやトルコは狙っているだろう。
同盟国の中露への接近ヘッジの可能性は大いにあり得る。韓国の対中接近も否定できない。ウクライナは大きなインパクトを受ける。しかし西側は今までの原則を堅固に維持していくべきだ。国際秩序が掛っている。
アジアへの6つの懸念
ルースの記事では、残念ながらアジアの議論が少ない。習近平は、トランプの登場を歓迎、新たな機会が開けると期待しているだろう。中国の台湾政策も一層活発化するかもしれない。「ロシアより中国が難しい」とルースは書いている。
アジアについては次の幾つかの点が指摘できよう。①中国の台湾への締め付けが強まる。奇襲の可能性に要注意だ。中国は日本に対し軍事的に一層際どいことをやってくる可能性もある。日本は適正な対中政策を維持していくべきだ。
②北朝鮮も追随して動くだろう。③トランプは同盟国に乱暴な議論をしてくるだろう。財政面や軍事的役割の面で「負担の分担」について強硬な要求があり得る。④米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」もどうなるか、分からない。⑤日米豪印4カ国による連携の枠組み「クワッド」も継続されるか不透明になり得る。
⑥国際貿易秩序はいよいよ崩壊する。トランプの10%均一関税は国際貿易秩序への決定的一打になる。TPPへの攻撃も続くだろう。インド太平洋経済枠組み(IPEF)も同様だ。バイデンの一連の政策は逆転されることになろう。