2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年10月22日

軍事技術情報を買えない中国

 ところで、中国が最も欲しているのが技術情報であることは、サイバー攻撃に関する組織からも見て取れる。中国サイバー攻撃の主役とされる第61398部隊は、SIGINT(Signal Intelligence)を担当する総参謀部第三部の二局に所属するが、この総参謀部第三部は技術偵察部であるとされる。因みに、一般に情報部と呼ばれるのは総参謀部第二部であり、主としてHUMINT(Human Intelligence)活動に従事している。監視や聞き込み、或いは対象となる人物との接触等、人が直接行う情報収集活動である。

 サイバー攻撃の主役が技術偵察部であること自体、中国のサイバー攻撃の本来の目的が、技術情報の収集であることを物語っている。中国が技術情報、特に軍事技術情報を欲しがるのは、それら技術を買うことが出来ないからでもある。

 意外に思われるかも知れないが、中国人は偽物が嫌いだ。お金があれば、本物を、しかもハイエンドのものを購入する。筆者も、中身はソニーだと宣伝する中国製DVDプレイヤー(リージョン・コードにかかわらず、どの地域のDVDでも再生可能)を購入しようとした際、自分のドライバーに「旦那が偽者を買っちゃいけない。自分だって金を貯めたら日本製を買う」と、説教された経験がある。

 中国も技術を買うことが出来れば、サイバー攻撃による情報窃取という手段を減らすかも知れない。実際に、英国等の大学に多額の研究資金を提供し、エンジンの開発等も行っている。しかし、今すぐ使える技術は買いたくても買えないのが現状だ。武器を中国に輸出しているロシアでさえ、重要な技術やノウハウを中国に伝えることはない。

サイバー・ビジネスに力を入れてきた米軍需産業

 先進技術は高額で売れるが故に、米国は中国による技術の窃取を問題にしている。安全保障は金になるのだ。

 米国のサイバー戦自体、巨額の予算の上に成り立っている。2013年5月31日付のウォールストリート・ジャーナルは、米国の予算削減後も、諜報関連予算でワシントンDCが好景気に沸く様子を伝えている。ボーイングやロッキード・マーチン等軍需産業のIT部門の社屋は、NSA(アメリカ国家安全保障局:サイバー空間を用いて情報収集を行っていると言われる)のすぐ傍らに建っているとも聞く。ワシントンの友人などは、彼ら(軍需産業)がどこを見て仕事をしているのかは明らかだ、と言う。ボーイング社のスタッフは、「今や、航空ビジネスよりサイバー・ビジネスの方が大きくなっている」と述べている。


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