2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2013年10月28日

 福島第一原発の事故炉の廃炉についてはその実施体制について別途検討が必要(当面は東電を主体とすべき)だが、福島第一原発以外の商業炉やこれまで国の機関(原研や動燃など)が設置してきた炉についても、いずれすべて廃炉という課題に直面する。こうした「古き遺産」の処理を原子力バックエンド機構の役割として有償で引き受けることが重要な視点になってくる。

 これらの処理費用のうち廃炉技術全体の向上に資するものについては、エネルギー対策特別会計からの公費投入を行うなど、長期間にわたる廃炉事業を効率的・効果的に実施していく仕組みを構築する必要がある。さらに、廃炉作業完了時に除染した土地を売却することにより、一連の処理に要した公費の一部を取り戻すための制度的措置を講じることを検討すべきである。

原子力損害賠償制度の適正化

 福島第一原発事故によって、現行の原子力損害賠償制度の欠点が明らかになった。それはいったん事故が起こればコミュニティ自体が崩壊するという問題に対処できていないこと、原子力事業者は損害賠償や除染、廃炉などに関する青天井の債務を抱えながら、電力の安定供給を引き続き行っていかなければならないこと、原子力事業者間で安全性向上を目指した自律的な競争を行うインセンティブが制度にビルトインされていないことなどだ。

 こうした問題を解決するために、三層構造からなる原子力事故対応制度を構築することを提案する(図3)。この制度改革案は単なる「原子力損害賠償法の改正」にとどまらない総合的な被災者救済策と災害コストの分配を企図したものだ。

 福島第一原発の事故によって原子力事業者一般に投げかけられている技術力や組織力に対する不信感などを考慮すれば、原子力事業者自らが安全性を高める努力を怠れば懲罰を受け(経済的負担や検査内容の加重など)、一方で安全運転のパフォーマンスがよければ報奨を与えるような仕組みを構築する必要がある。


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