2024年11月22日(金)

ビジネスパーソンのためのエンタメ業界入門

2013年10月29日

アップル“勝者の余裕”か

 ただ、近年は変化も感じます。楽曲の値付けも選択肢が増えました。音楽配信を模すように始まった、iPhoneアプリの配信サービスAPP Storeでの条件も、当初はアップルIDでの決済がマストであったのが、アップルIDを用いた決済が選べればOKとレギュレーションが変わったようです。iTunes Store導入時は、ユーザーをアップルIDで一元管理して、独占的なプラットフォームを指向していましたので、大きな変化です。

 今回のNTTドコモのiPhone取扱開始に関しても、交渉の内容は知るよしもありませんが、アップル側にも譲歩があったのではないかと推測します。ドコモは自社のコンテンツ流通システムや独自サービスを重要視していて、iPhoneの中での共存にはこだわりがあるはずです。実際にどのように両立させていこうとするのかは、これから少しずつ明らかになることでしょう。

 アップル社は、“勝者の余裕”なのかもしれませんが、以前ほど、自社の垂直統合システムに固執していない印象があります。既に自社の生態系に取り込んだユーザーの利便性が確保されれば、他社の生態系の存在も認めるように変化したのではと感じられます。コンテンツを商品として取り扱っていても、企業としての主な収益源はデバイス販売だということも理由なのかもしれません。

 ちなみに、故スティーブ・ジョブズは、ソニーのウォークマンとNTTドコモのi-modeを研究して、この仕組みをつくったと語っていたそうです。

 スマートフォン普及前の日本において、携帯コンテンツのビジネスは通信会社の公式サイトが主役でした。ドコモの公式サイトに選ばれることが、コンテンツプロバイダーの成否を分ける時代が続いていました。ユーザーはキャリアの公式サイトであることに安心感を持ち、厳選されたサイトからサービスを選び、支払は電話料金と一緒に銀行口座から引き落とされるという仕組みは、コンテンツ提供側には、便利なエコシステムとして機能していました。

 しかし、スマートフォンの登場で、携帯電話もインターネットと繋がり、「公式サイト」的なリコメンデーションは力を失いました。

 そんなdocomoが、遂にiPhoneを販売し、アップルのコンテンツ流通システムを受け入れるという事実に、時代の流れを感じます。

いびつな仕組みは継続しない

 従来の日本のパッケージ流通は、有効に機能していました。日本独自の形で発展した、洗練された仕組みを持っています。レコード業界の再販制度については第1回でも触れましたが、CD店との共存共栄の仕組みでした。しかし大きな成長が望めない市場の中で、従来の仕組みの維持が難しくなってきています。


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