2024年12月23日(月)

田部康喜のTV読本

2013年10月16日

 「休日は嫌いだ。一人でいることが目立つから」

 「私は誰にも選ばれなかった。だからひとりなんだ」

 主演女優の名前が明かされなかった「ハクバノ王子サマ 純愛適齢期」は、読売テレビ制作、日本テレビ系で第1回が10月3日、第2回が10日に放映された。

 冒頭のモノローグは、主人公を背後から映し出し、美容院のシーンで鏡に映る。

 優香である。好感度の高いタレントとして知られる。

美しい映像と静かな語り

 番組は木曜日の深夜に始まって曜日をまたぐ。なにげなくチャンネルを合わせると、パステル画のような淡い映像のなかで、女優の静かな語りが流れてきた。

 優香が演じるのは、女子高の古文担当の教師・原多香子。年齢は32歳の独身である。勤務している校名に「小田原」の冠があることや周囲の緑の深さから、設定は地方都市のようである。原はこの高校の出身者でもある。

 「それでも恋をして、無暗に傷ついていま私は32歳」

 かつての教師であり、いまでは同僚である生物担当の黒沢明夫(中村俊介)がその相手である。黒沢には妻子がある。1年前にいったんは別れた。

 「さびしさにもがいて、おぼれるだけ」

 出身校の女子高に教師として戻ってくる。学園ドラマの登場人物には珍しくはない。生徒役の美少女たちと絡み合う筋書きも。

 それだけに、学園ドラマに挑戦する脚本家や演出家、監督は、新しい境地を切り開こうとするものである。

学園ドラマを予想されられ、よい意味で「裏切られる」

 脇道にそれることになるが、中原俊監督の名画「櫻の園」(1990年)は地方都市の女子高の演劇部を舞台にして、学園の満開の桜のシーンが美しく展開しながら、美少女たちのさりげないセリフが胸にしみいる傑作である。主役の中島ひろ子は、TBSの大ヒット作「半沢直樹」で、半沢の敵役の支店長夫人として落ち着いた演技をみせていた。


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