「ハクバノ王子サマ 純愛適齢期」は、主人公と舞台の設定によって、学園ドラマを予想させられて、実はそうではないことにたちまち視聴者を驚かせる。
優香がいつもの明るい表情を隠して、不倫に揺れるアラサーを演じている。ドラマの冒頭の美しい映像と優香の淡々とした語りに、よい意味で裏切られ、ドラマの展開にひきつけられた。
優香が演じる原が魅かれるのは、新任の生物担当の教師・小津晃太郎(三浦貴大)である。社会人経験のある25歳の小津は留学中の婚約者がいる。
原の担任するクラスの副担任として、小津はコンビを組むことになる。
小津には、父が不倫のために母と離婚した過去がある。
新学期の全校集会で、新任の挨拶のなかで、からかう女生徒に答えて、こういう。
「僕は女性を絶対に泣かせない」
結び付きがたいふたつのテーマが
重層的に描かれる
ドラマは、その筋立ての伏流水として、「不倫」がテーマになっていくことがわかってくる。
授業の準備のために、居残りで教員室に残っていた原に、帰宅しようとしていた黒沢が声をかける。近づいて、そしてくるりと後ろ向きになった黒沢の肘を原がつかむ。
この直前に、原は小津とふたりになって話したが、小津が帰ってしまい、ひとりのさびしさがこみ上げてきたのである。
黒沢がタクシーで原のマンションに向かい、部屋のなかに消える。それを遠くからじっとみていたのが、女生徒の市川琴美(優希美青)である。
市川もまた、父親の不倫によって、母が離婚した家庭に育った。
翌日の授業後、市川は小津に原と黒沢を目撃した事実を告げる。