「わたし、不倫が許せないんです」
「僕もだ」と小津は答える。
原と黒沢は実は、その夜なんの関係も結ばなかった。それぞれが担任している女生徒ふたりが、痴漢に遭ったというので、学校から警察に行くように指示されたからである。
被害者だったふたりは翌日、警察の調べによって、供述がまったくのうそだったことが明らかになる。ふたりはいう。
「親に心配して欲しかったから」
「わたしは、通っている塾に好きな男の子がいて、気をひきたかったから」
学園の少女たちの青春のエピソードと、教師という大人の不倫のもつれた糸が交錯する。結びつきがたいと思われるふたつのテーマが、重層的に描かれていく。
視聴者の感性が敏感に反応する深夜のドラマ
原と黒沢、小津の3人がレストランで食事をすることになる。小津がトイレに立ったときに、黒沢はテーブルの上で、原の手を握り締める。妻が子どもと実家に帰っているので、誘っている。
その光景をかいまみた小津は、ふたりを残してその場を逃げるようにして去る。
ふたりで原の部屋に向かうタクシーの前に突然、小津がたちふさがる。原が降りる。
「誰かほかに送るひとが必要なら僕が送ります」
小津はそういって、原をみつめて、さらにいう。
「ほおっておけないんです」
黒沢はタクシーの運転手に指示して、ひとりで去っていく。
深夜のドラマは、あまり調子が高くないほうがいい。夜の闇に包まれて、視聴者の感性がささやかな映像と音にも敏感に反応するからだ。
「ハクバノ王子サマ 純愛適齢期」のセリフの数々は、いまこうして昼間に原稿に記していると、ちょっと気恥ずかしくなりそうである。しかしながら、木曜と金曜をはさむ時間帯にはほどよい。 (敬称略)
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