2007年にはiPhoneが発売され、iPhoneからもiTunes Storeでの購入ができるようになりました。iCloudというパーソナルクラウドサービスも提供され、Music Matchという機能で、ユーザーはどのデバイスからでもストレスなく聴くことができます。
米国音楽配信市場におけるiTunes Storeのシェアは約2/3となっています。CD専門チェーン店が壊滅し、パッケージの占める割合が34%に対して、音楽配信が58%と主流になっている米国音楽市場において、非常に大きな存在です。主要な音楽流通の仕組みと言えるでしょう。(2012年IFPI調査)
また、iTunes Storeは世界共通のプラットフォームを提供しています。世界119の国と地域でサービスを行っており、世界最大の音楽配信サービスです。
アップル商品を使っているユーザーにとっては、とても便利なコンテンツ供給の仕組みです。楽曲だけでなくMUSIC VIDEOや映画、電子書籍などの配信も行っています。一つのアカウントで、複数のデバイスで様々なエンターテインメント・コンテンツを楽しむことができます。
このアップル社の仕組みをコンテンツ制作者側から見てみましょう。
グローバルな音楽流通を実現
iTunes Storeができるまでは、自国以外への楽曲の流通には、大きな障害がありました。その国のレコードレーベルと交渉をして、インターネットが広まってから、YouTubeなどを使って楽曲を聴かせたり、無料でダウンロードさせることはできましたが、マネタイズするのは困難でした。
iTunes Storeができたことで、この障壁は一気に下がり、世界中で楽曲リリースが簡単にできるようになりました。米国では、インディーズアーティストが自分でリリースできるサービスとしてTune Core(ソリューション提供型の配信アグリゲーション)が支持を集めています。あらゆるアーティストにグローバルな音楽流通が実現したのです。
一方で、マイナス面が語られることもあります。権利者サイドが主張したのは、交渉の余地のない、一律の取引条件への批判でした。アップル社の取り分は一律で30%、楽曲の単価も1曲99セントと決められてしまっています。コンテンツの人気によって、取引条件を交渉する従来型のビジネス感覚からは抵抗感が強いやり方です。
世界ではデファクトになっているiTunes Storeが日本での影響力が小さいのは、アップルのやり方に反発した日本のレコード会社が楽曲の配信を行わなかったのも、大きな理由の一つです。