2024年7月20日(土)

ビジネスパーソンのためのエンタメ業界入門

2013年10月29日

 海外大手レーベルは、Spotifyなどのオンデマンド型のストリーミングサービスは応援し、無料ラジオ型のストリーミングサービスには批判的な姿勢だそうです。特にPANDORAに対しては、今のルールでは広めたくないという意思で、新たな国での許諾にはネガティブと聞きます。一方、PANDORA経営陣側も、現状のままでは利益が確保できないので、ルール変更が必要と考えています。大手レーベルは、逆方向を向いています。PANDORAでは、今年9月に新しいCEOが就任しましたので、折り合ってきたように見えた米国でのルールがどう変わっていくのか、注目したいと思います。

 実は、日本には秀逸なコンテンツ生態系が一つ形成されつつあります。ニコニコ動画のクリエイター奨励プログラムです。ニコニコ動画での再生回数に応じて、権利料がアップロードしたユーザーに支払われるという仕組みです。今年の10月には総支払額が6億円と発表されています。

 ・ドワンゴ、「クリエイター奨励プログラム」総支払い額6億円に 1000万円以上は7人 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1310/03/news105.html

 クリエイターとドワンゴがダイレクトに報酬を支払う、レコード会社など既存のプレイヤーを「中抜き」する仕組みなので、従来型の仕組みとの共存は難しそうです。そのため、このまま伸びて大きな影響力を持てるのかについては疑問も残りますが、検証に値する良質の「コンテンツ生態系」モデルであることは間違いありません。

クラウド化に対応したコンテンツ流通と
エコシステムの再構築を

 コンテンツビジネスの生態系については、モノからデジタルファイルに変わり、無料化に向かうという言説も強いですが、本当にそんなに単純な構図なのでしょうか?

 紙媒体に印刷されていた書物が、電子化されてデバイスで読むことにすべて変化するというのは、短絡的な考え方だと私は思います。

 クラウド化が進んで、ネットにおけるコンテンツ消費は、所有のメタファーでは、なくなっています。常時接続による月額課金で、好きなだけコンテンツを楽しむというのは、従来にはなかった消費の形態です。

 ユーザーにとっても、使用と所有は別種の欲望です。クラウド化の進展で、新たなコンテンツ使用の楽しみ方が広まることは、所有の欲求に対して、ネガティブな効果以上に、購入促進する効果もあるのではないでしょうか? 前述のPANDORAやSpotfyなどのストリーミングサービスは、CDの代用というよりは、ラジオやジュークボックスの進化形と見る方が自然です。ユーザーと音楽との接点を増やすことが、とても大切で、興味が喚起できれば、コレクションという消費行動のチャンスは増えるわけです。

 若年層ほど、スマートフォンを使いこなして多様な楽しみ方を積極的に見つけています。コンテンツ消費大国の日本から、世界で広く支持される新しいコンテンツサービスが出てくるチャンスはあるはずです。音楽プロデューサーとして、新しいサービスの登場で、コンテンツ生態系が再構築、強化されることを期待しています。

 追伸:そんな、日本の若手起業家への期待を込めて、新たに著作を出版しました。『世界を変える80年代生まれの起業家』(スペースシャワーブックス)は、お陰様で好評のようです。10人の若手起業家を通じて、日本の若者の新しい働き方を考える機会になれば、望外の喜びです。

<用語解説>
・iCloud→様々なコンテンツやデータをクラウド上で管理し、どのデバイスからでも使えるアップル社が提供するパーソナルクラウドサービス。
・Music match→CDから読み込んだ音楽や、iTunes以外から購入した音楽を含むコレクション全体をiCloudユーザーのコレクションからiTunes Storeにもある楽曲を見つけ、マッチした曲はiCloudのライブラリに自動的に追加され、どのデバイスでも、聴けるようになり、もとの音質が低くても高音質で再生される。
・Tune Core→2006年に米国で始まった音楽流通サービス。アーティスト自身の手で、様々な配信サイトで楽曲が販売できる環境を提供している。使用料は固定の年額で、配信売上は全額アーティスト側に分配される。2010年に日本法人tunecore Japanが設立されている。


<参考>
世界の音楽市場規模 国別ランキング TOP20(2012年)
【国際レコード産業連盟(IFPI)「Recording Industry in Numbers 2013」】

 
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