2024年11月26日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年2月23日

 以上にかかわらず、上記の論説はフィツォのプライオリティは国内にあると観察している。それは恐らく正しいであろう。

 フィツォにはオルバンのような強固な国内の政治的基盤がある訳ではなく、また、オルバンのような国際的な野心がある訳でもないであろう。彼は、オルバンやポーランドのカチンスキの非リベラリズムの手法に倣って自身の政権基盤を固めることに着手したようである。

法の支配に関する紛争が激化

 注目されているのが一連の司法改革の提案である。フィツォは就任早々に腐敗の捜査に特化した特別検察官室を廃止する意向を表明した。また、腐敗を含む深刻な犯罪に対する刑罰を軽減し、訴追が許容される時間枠を縮小する(現行の20年から最長5年に縮小する)ことが提案されている。

 これによって、Smerとその連立政党の政治家に係わる幾つかの深刻なケースが葬り去られるかも知れない。さらには、内部告発者の保護の制度の変更が提案されている。

 野党陣営はこれら提案を批判し、現大統領のチャプトヴァーは容認出来ないと述べているが、彼女の拒否権は再度の議会の議決で覆る。欧州委員会は法の支配の観点からスロバキアに慎重を期すべきことを警告している。

 1月17日、欧州議会は腐敗の事案を訴追し処罰する体制を弱体化することを批判し再考を求める決議を採択した。欧州検察庁はEU資金に係わる腐敗の事案の捜査が大きく害されることに危機感を表明している。

 この論説は「モグラたたき」だと言うが、法の支配を巡るEUとスロバキアの紛争が激化しそうな様相である。

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