2024年7月15日(月)

都市vs地方 

2024年2月22日

カストロ地区が安心して歩ける理由

 ダウンタウンに荒れている地域がある一方で、市内のカストロ地区(このカストロは、メキシコ統治時代の州知事の名)では、小さいが3階建てのビクトリア調の良好な木造建築が立ち並び道路にもごみが散乱せず住みよいまちづくりが行われている。カフェやレストラン、そして本屋や小物を売る店も、高級な店はあまりないものの庶民的で落ち着いた雰囲気で、一人でもゆっくりできる店が多い。

カストロ地区のまちなみ(筆者撮影)

 この地区のリーダーだったハーヴェイ・バーナード・ミルクは、海軍勤めを経て、ゲイであることをカミングアウトしてから、サンフランシスコ市会議員に選ばれた。LGBTQ(性的少数者)の権利を守ることに努め、40歳代で暗殺されたが、人権を守ることを主張し、差別のないまちをつくった。

 サンフランシスコ公共図書館専門員トレーシー・エアーズ氏によると、現在、カストロ地区にはLGBTQの人が3分の1くらい住んでいる。互いに人権を尊重するまちという雰囲気が横溢しているので治安も悪くない。

 暗殺されたあと、当時のオバマ大統領は、ミルク氏の功績を称え、海軍の給油艦をハーヴェイ・ミルクと命名した。またサンフランシスコ国際空港の第1ターミナルは「ハーヴェイ・ミルク・ターミナル」と名付けられている。

 またサンフランシスコから近いサンノゼ市でも荒廃している地域があるが、市内の旧日本人街は落ち着いた雰囲気で、レストランや小売商店も盛業中である。サンノゼ市の日系アメリカ人博物館でボランティア活動を続けているIBIDENアメリカ法人社長のアンディ・ウチダ氏によると、ここでは第二次世界大戦中から戦後を通じて、人権を抑圧された歴史をもつ日系移民の後継者たちが協力してまちを維持してきた。

 このように、決して高級住宅地でない地域でも、人権に対する強い意志をもつ人たちがつくってきた地域は荒廃しない傾向が共通にある。マイノリティを認める気持ちを持った人々が住む地域は、日本人にとっても誰にとっても居心地がよい。サンフランシスコの状況は、コミュニティの大切さを改めて私たちに感じさせる。

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