2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月14日

 米国の防衛のためにATACMSを手元に置いておく必要があるという論は、現在の情勢に鑑み間違っていると思われる。ウクライナでのロシアの勝利が米国への安全保障上の最大の脅威になると考えるべきであろう。

 イグネイシャスの論説の中で、必ずしも賛成できないのは、ロシア人はナポレオン戦争でも第2次世界大戦でも多くの犠牲を出しつつ も結局勝利した、ロシアは戦争に強いとしている部分である。ナポレオン戦争も第2次世界大戦時の対ドイツ戦も、祖国防衛のための戦争であり、 ここではロシアは強かった。しかし、例えばアフガニスタン戦争では、ロシア遠征軍の戦死者が2万人近くになった段階でロシアは撤退した。

 ロシアは日露戦争でも第1次世界大戦でも敗北している。防衛戦争には強いが、遠征戦争などにはそう強くない。

ロシアとウクライナ、異なる国民の戦争への姿勢

 今次のウクライナ戦争はどうなのか。プーチンはこれを祖国防衛戦争にしようと宣伝活動をしているが、 それに成功していない。総動員をかけられず、さらなる部分動員も国民の予想される反発で出来ない状況にある。

 ウクライナにとっては、この戦争はまさに祖国防衛戦争である。したがって士気は高い。

 クレムリンの高官が百万人以下のデモは対応できると言ったという点についても、異論がある。ナワリヌイの遺体を母親に渡さず、母親に秘密で埋葬するように、そうでないと刑務所の敷地に埋葬すると言っているのは、ナワリヌイの葬儀がデモにつながることを怖れているからである。ナワリヌイの遺体は結局母親に引き渡されたようであるが、ロシアの自信ある態度の裏にある不安を過小評価している嫌いがある。

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