2024年4月20日(土)

BBC News

2024年3月23日

ロシアの首都モスクワ郊外のコンサートホールが22日夜、複数の銃撃犯に攻撃された。ロシア捜査委員会は23日午後、死者が少なくとも133人に達したと発表した。

捜査委員会は通信アプリ「テレグラム」で、首都モスクワ北西近郊クラスノゴルスク市にあるコンサートホールの現場を調べている救急当局が、次々と遺体を発見していると明らかにした。

事件当時、場内には最大6200人がいたとされる。

モスクワ州のアンドレイ・ヴォロビョフ州知事は、被害者の数はまだ「相当増える」かもしれないと話している。

ロシア当局によると、140人以上が負傷し、107人が病院で手当てを受けている。そのうち子供1人を含む16人は「きわめて重体」で、44人は重体だという。

ロシア捜査委員会によると、ほとんどの人の死因は、銃で撃たれたことか、火事による煙などを吸い込んだことだという。

ロシア連邦保安庁(FSB)はウラジーミル・プーチン大統領に、「クロクス・シティー・ホール」襲撃に直接関与する4人を含む11人を拘束したと報告した。

武装勢力「イスラム国(IS)」が、攻撃は自分たちによるものだと主張している。23日にはソーシャルメディア「テレグラム」上のチャンネル「アマク」でISは、襲撃に関与したと主張する4人の覆面男性の画像を掲載した。

ISはさらに、襲撃のきわめて生々しい映像も公表。銃撃犯の1人が複数の人に向けて発砲する様子が映っている。BBCはこの映像が本物だと確認したが、放送はしない。

ISによる犯行という主張について、ロシアはコメントしていない。

プーチン大統領はウクライナの関与示唆

プーチン大統領は23日午後、国民にテレビ演説で、実行犯4人は全員逮捕したと述べた。

大統領は、3月24日を全国的な追悼の日にすると発表。襲撃は「野蛮なテロ行為」で、事件によって「我々が分断することはない」と強調した。

プーチン氏はさらに、襲撃犯がウクライナへ逃げようとしていたとして、国境のウクライナ側で襲撃犯を越境させようとする者たちがいたとも述べた。

これに先立ちウクライナは、一切の関与を否定。襲撃犯がウクライナへ逃げようとしていたというロシア政府の主張を「ばかげている」と一蹴している。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は23日夜、毎晩定例のオンライン声明で、プーチン氏が攻撃をウクライナのせいにしようとしていると非難した。

「昨日モスクワで何があったかは明らかだ。そしてプーチンやその他の連中は、責任を転嫁しようとしている。連中のやり方はいつも同じだ。もう何度も見ている(中略)これはまったく、くだらないプーチンのやり方だ。ロシア国民のために動いて語りかけるのではなく、丸一日ずっと沈黙して、どうやったらこれをウクライナのせいにできるか考えていたのだ」と、ゼレンスキー氏は述べた。

アメリカは今月初めに警告と

BBCがアメリカで提携する米CBSニュースは、米政府関係者の話として、ISがロシア攻撃を意図していたと示す情報をアメリカ政府が入手したと伝えた。

アメリカ政府は現地時間22日深夜、モスクワで「大規模集会」を標的にした攻撃が懸念されると、3月初めにロシア当局に警告していたのだと明らかにした。

国家安全保障会議(NSC)のエイドリアン・ワトソン報道官は、「今月初めにアメリカ政府は、モスクワにおけるテロ攻撃計画について情報を得た。コンサートを含む大規模集会が標的になる可能性があるという情報だ」と説明。アメリカ政府は「この情報をロシア当局と共有した」と、報道官は話した。

在モスクワのアメリカ大使館は3月上旬、ロシア国内のアメリカ国民に対して大規模な集会は避けるよう警告していた。「過激主義者がモスクワでの大規模集会を間もなく標的にする」という情報を注視しているという警告内容だった。

同大使館は22日夜、公式サイト上で警告内容を更新し、今回の攻撃現場周辺に近寄らないようアメリカ国民に促した。

ホワイトハウスは23日、「残忍」な攻撃を非難し、ISは「世界中で倒さなくてはならない、共通の敵、テロリストだ」と強調した。

コンサート開始直前

BBCが検証した動画では、クラスノゴルスク市の「クロクス・シティー・ホール」で、迷彩服を着た少なくとも4人が攻撃に参加している。

ホールでロック・コンサートが開かれる直前の午後8時ごろ、銃撃犯たちはまずロビーに入り、そのまま客席へ向かったという。

警備員によると、重装備の銃撃犯たちが発砲しながらロビーに侵入した。

ソーシャルメディア「テレグラム」のチャンネル「バザ」に対してこの警備員は、「ほかの警備員が3人いて、看板の後ろに隠れた。犯人たちは我々から約10メートル先を通過して、1階にいる人たちに無差別に発砲し始めた」と話した。

襲撃犯が何らかの発火装置を投げたことで、出火したとみられる。

建物のほとんどが火に包まれ、屋根の一部が崩落した。ホールの上の2階部分のガラスも吹き飛んだ。

目撃していた男性ヴィタリさんは場内の上層階の席にいて、銃撃犯が発砲を開始するのを見たと話す。「火炎瓶をいくつか投げて、すべてが燃え始めた。自分たちは出口へと誘導された」とヴィタリさんは話した。

ロックバンド「ピクニック」のコンサートのため6000人以上が、ホールに集まっていた。目撃者によると、バンドがステージに上がる数分前に攻撃が始まった。バンドメンバーは無事だったという。

ホールの場内にいた女性はロシアのテレビに対して、発砲に気づいて自分やほかの観客は出口に急いだのだと話した。「1階席に銃を持った人がいるのが見えて、銃声が聞こえた。私はスピーカーの後ろに隠れようとした」のだという。

別の目撃者によると、同じ建物内の別室では社交ダンスの競技会も開かれており、襲撃時に多くの子供がいたという。

コンサート会場にいた人の一部は、舞台経由で駐車場に脱出した。屋上に逃れた人たちもいたほか、100人以上が地下階から逃れたとロシア当局は説明している。

現場にはただちに数十台の救急車が急行した。

23日には、コンサートホールの前に多くの花やろうそくが供えられた。被害者のために献血する市民の行列もモスクワ市内各地で作られた。

モスクワのセルゲイ・ソビャニン市長は、今週末に首都で予定されていた公式行事をすべて中止すると発表。「被害者の大切な人たち全員に、お悔やみを申し上げる」と述べた。

ロシア第2の都市サンクトペテルブルクなど、他の都市や地域でも、行事の中止が発表された。

ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、「非道な犯罪」だとして、国際社会にこれを非難するよう求めた。

ウクライナはすぐに関与否定

ウクライナ政府はただちに関与を否定した。

大統領顧問のミハイロ・ポドリャク氏は「テレグラム」で、「あらゆることを差し引いても、ウクライナにとっては、すべては戦場で決まる」と書いた。

ウクライナ軍情報部のアンドリー・ユソフ報道官は、事件は「プーチンの特別部隊による、意図的な挑発行為」だと述べたが、証拠は示さなかった。

ロシア国営メディアによると、FSBは声明で、コンサートホールを襲撃した勢力はウクライナへ国境を越えるつもりで、ウクライナ側に「連絡相手」がいると述べた。

これについてウクライナ政府は、「ばかげた言い分」だと反論している。国防省情報総局のアンドリー・ユソフ報道官はBBCに対して、ロシアとウクライナの国境地帯には、ウクライナの軍や特別部隊が集結しており、「そこに容疑者が向かっているとすれば、容疑者はばかか自殺願望だということになる」と話した。

ウクライナ軍情報当局は、逆に今回の襲撃はウクライナに責任を負わせるためにロシア政府が計画したもので、国民の動員拡大を意図してのことだと主張していた。

ホワイトハウスのジョン・カービー戦略広報担当調整官は、銃撃の映像は「恐ろしいもので、見るのがつらい」と述べ、「このひどい銃撃事件の被害者たちのことを、もちろん思っている」と話した。

2002年にも劇場襲撃

モスクワで民間人が標的となる攻撃として、22日の事件は近年最悪のものだった。

2002年10月にはチェチェン武装派勢力がモスクワ市内の劇場を占拠し、900人以上の観客らを人質にとって立てこもった。

特殊部隊は3日後に軍用ガスを劇場内に投入し、突入した。

約130人の人質がこの事件で死亡した。

ロシアでは現在、空港や駅などの警備が強化されている。

<解説> なぜ「イスラム国」がロシアを攻撃――ウィル・ヴァーノンBBC記者(ワシントン)

モスクワ近郊の攻撃は自分たちによるものだという「イスラム国(IS)」系組織の主張が、本当だと確認されれば、イスラム主義者によるロシア内外での攻撃がまたひとつ増えたことになる。

2015年11月にはエジプト・シナイ半島上空でロシア旅客機が爆破された。乗客乗員224人のうちほとんどが、ロシア人だった。

犯行声明を出した「IS」はのちに、爆発物の写真を公表した。

2017年にサンクトペテルブクの地下鉄で起きた爆発事件では、15人が死亡した。これもイスラム過激主義と関係するとされた。

ロシア南部の北カフカス地方ではもう何十年も、武装勢力がロシア軍と戦っている。

その多くは10年前に「IS」がシリアで結成されると、一気にシリアへ向かい、一員となった。ロシアの北カフカスで活動する武装勢力の一部は、「IS」に忠誠を誓っていると専門家たちは言う。

ただし、22日夜の攻撃実行を主張するのは「IS-K」。この「K」は、イラン、トルクメニスタン、アフガニスタンの一部地域を含む古い名称「ホラサン」を意味する。

IS-Kはしばしプーチン大統領を非難しており、ロシアを標的にしてきたと、対テロ専門家たちは説明する。

IS-Kは、ロシア軍がチェチェンやシリアでイスラム教徒に対して残虐行為を重ねたと非難するほか、旧ソヴィエト連邦によるアフガニスタン侵攻も非難している。

(英語記事 Moscow attack: Gunmen kill dozens at Crocus City Hall in Moscow

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c514d0l3365o


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