2024年12月5日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年4月2日

 ②経済分野においても、09年以降、米国際開発庁(USAID)とベトナム商工会議所は、「企業から見た各地方の経済管理評価(PCI)」を企業へのアンケート形式で実施し、公表している。更に、ベトナムには53の少数民族が存在するが、少数民族の文化・権利は「尊重」されている。それらが故に、欧米諸国から、「人権」に関連して表立った批判はない。

 「政治的安定」に関しては、世論調査が公表されないので推測するしかないものの、ベトナム戦争終了後(1975年)に生まれた国民が、全人口の70%以上を占める時代になり、共産党支持率は益々低くなっていると思われる。50歳以上の国民は、共産党が「国の統一」を実現した貢献を認識しているが、戦争を知らない世代は異なる。但し、経済発展が漸く軌道に乗ったことから、国民の多くは政治的混乱を生む『体制の変化』までは、今のところ望んでいないであろう。

外国資本誘致の実態

 ベトナムが「経済発展を維持」するためには、「開放政策」を継続し、外国投資をうけいれることが不可欠である。但し、中国からの投資に関しては、分野および地域に細心の注意が必要であることをベトナム政府は十分認識している。

 コロナ前後から、中国や香港からの対ベトナム投資が増加している。指令24号では、①「国家安全保障に対する深刻な脅威を防ぐ」ための警戒を呼び掛けていること、②報道機関に対して、「フェイク・ニュースと戦うべき」等の記述が含まれており、これらはベトナムへの投資を増加している中国や香港を念頭において、記載されたものとも思われる。

 また、「経済発展の維持」の視点からは、インフラ整備の遅れ、地場産業の育成が期待ほど進んでいない実態とチョン書記長が進める汚職捜査の弊害が懸念される。特に政策が決定通りに進まず、国や地方政府に損害が出ると責任を負わされる事案が引き続き起こっており、決定権を有する者が決定しないケースが多発している。

 このような実態を前にして、日本企業の中からは、書記長の交代時期(任期は26年春)が来るまで、ベトナムへの新規投資は控えるとの意見すら出始めているらしい。

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