2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2013年11月19日

統一された対日アプローチの形成

 ロシアの対日アプローチに関しては、政治サイドと軍事サイドの間に矛盾が散見される。その代表例が、2013年の2月と8月に繰り返されたロシア機による領空侵犯である。今回の「2プラス2」会合でも、再発防止について日本側から問題提起を行っている。これは、日露間の安保協力を推進しようとする政治的意向に、ロシア軍が十分に呼応しきれていないことを意味する。ロシアの軍事サイドが日本との安保協力に消極的なのは、冷戦時代から続く対日米不信に加えて、日本を軍事的に自立したプレーヤーと認識していないためである。ロシア軍が極東地域で実施する最近の軍事演習には、以前のような、日本を念頭に置いた「対日レトリック」は少なくなっている。それでも、プーチン大統領による政治的意向がロシア極東地域の部隊にまで徹底されるかどうかが、今後の日露防衛協力の拡充を図る上で重要となるだろう。

 政軍間の対日アプローチの温度差に加えて、外務省と国防省の縦割りも根強く、クレムリンの政治意図が両省の対日姿勢に十分に反映されないこともある。大統領の意向に従い、外務省と国防省が連携して、統一された対日政策を打ち出せるようロシア側を促すことが、「日露2プラス2」と日本版NSCが目指すべき当面の課題と言えるだろう。ロシア軍は、北方領土には軍事的な価値があり、安全保障面から日本への返還は困難であると考えている。大統領の政治決断を軍事部門が受け入れる状況が整備されることが、領土問題解決に向けたロシア側の条件の1つと言えるだろう。


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