2024年6月17日(月)

家庭医の日常

2024年4月29日

そもそもガイドラインとは?

 厚生労働省が『健康に配慮した飲酒に関するガイドライン』を発表したのは今年の2月19日のことだ。飲酒に伴うリスクを周知し健康障害を防ぐための、日本では初の指針ということで、メディアでも注目したようだ。最近も「日経ニュース プラス9」で扱われていた。

 このガイドラインは、いわゆる「診療ガイドライン」とは若干趣を異にしている。その趣旨には「アルコール健康障害の発生を防止するため、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの予防に必要な注意を払って不適切な飲酒を減らすために活用されること」が目的であると書かれている。つまり、医療者が診療で参考にするというよりも、国民への情報提供という面が大きい。

 日本では、医療者の中でさえあまり浸透していない診療ガイドラインが少なくないが、それらのほとんどは一般の人たちに知られることもない。しかし、このガイドラインについては、医療者よりも一般の人たちの方がより知っているのではないだろうか。

 ただ、(大手メディアによって報道されたことのみを元にした私個人の感想だが)ガイドラインを何か「遵守しなければならないもの」、自分たちを「制限してくるもの」というように捉えている人が多いような印象がある。そして、それら「遵守」と「制限」の対象は飲酒量なのだ。

純アルコール量で把握する飲酒量

 アルコール飲料のアルコール濃度はいろいろなので、このガイドラインでは純アルコール量に着目して、自分にあった飲酒量を決めて、健康に配慮した飲酒を心がけるように勧めている。

 アルコール飲料に含まれる純アルコール量は、「摂取量(ミリリットル)× アルコール濃度(度数/100)× 0.8(アルコールの比重)」で計算することができる。

 例えば、下記のアルコール飲料は、それぞれ記載の量で純アルコール量約20グラムに相当する(カッコの中の%はアルコール濃度)。ちなみに、このガイドラインにはこれらの例は書かれていない。国民への情報提供を目的にするならば、その情報の内容だけでなく情報がよりよく理解される方法にも工夫が必要で、具体的な例を示すことは有効だったはずだ。

ビール(5%)   500ミリリットル
チューハイ(7%) 350ミリリットル
ワイン(12%)   200ミリリットル
日本酒(15%)   180ミリリットル
焼酎(25%)    100ミリリットル
ウイスキー(43%) 60ミリリットル

 実は、飲酒量を純アルコール量で把握すること自体は特別斬新なことではない。1992年に発表された、世界保健機関(WHO)が開発したアルコール問題のスクリーニングのための質問票『AUDIT(Alcohol Use Disorder Identification Test)』(オリジナル版日本語版)では、純アルコール量で10グラムに相当する飲酒量を「ドリンク」という単位で呼んで使用している。『AUDIT』は、英国の医療技術評価機構(NICE)、米国の予防医療専門委員会(USPSTF)をはじめ世界で多くの機関・団体が標準的方法としてその使用を推奨している。


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