葉物野菜を意識する
前回から、アルツハイマー病の治療プログラム「リコード法」における食事のとり方を紹介している。
リコード法では「ケトフレックス12/3」という独特の食事法を取り入れているのだが、「ケト」はケトン体を、「フレックス」は緩やかな菜食主義を、「12/3」は時間を表している。前回はそのうちのケトン体について紹介した。
今回は、前回に引き続き、リコード法を治療に取り入れている新宿・ブレインケアクリニックの今野先生に教えていただきながら、「ケトフレックス12/3」の「フレックス」と「12/3」を見ていく。
まずは「フレックス」、つまり、野菜をとることの重要性についてから。
「野菜は、抗酸化作用や抗炎症作用を持つポリフェノールなどの栄養を含んでいます。そのため、アミロイドβを蓄積させる原因になる酸化や炎症を防ぐ働きをしてくれるという意味で、とても大事です。また、糖質が少ない一方で食物繊維が多いので、血糖値の上昇を抑え、ケトン体を増やす様態を作りやすくしてくれます」(今野先生、以下同)
さらに、第12回で伺った「有害物質を除去する」ためにも、野菜の力は欠かせないという。
「リコード法では、野菜を毎日たっぷりととるために、野菜を中心にして献立を組み立てることを勧めています」
野菜の中でも、特に意識したいのが、レタスやキャベツ、小松菜などの葉物野菜だ。葉物野菜には、ビタミンB群の一種である葉酸が多く含まれているのだが、葉酸にはアミロイドβの蓄積を防ぐ側面があるそうなのだ。
「私たちの血液中には、アミノ酸が悪玉化したホモステインという物質があるのですが、ホモステインが増加するとともにアミロイドβの蓄積が促され、アルツハイマーのリスクが高まるとされています。そのホモステインの濃度を低くするのに役に立つのが、葉酸とビタミンB6、B12です。そのうち、ビタミンB6とB12は普通に食事をとっていれば不足することは、ほぼありませんので、不足しやすい葉酸を意識するのが大事です」
なお、「喫煙や飲酒によって、葉酸の吸収が妨げられることがある」という事実も知っておくといいだろう。
長寿遺伝子を発動させる
続いては、『ケトフレックス12/3』の12と3について伺おう。
「この2つは、時間を表しています。12というのは、『夕食から朝食までに12時間は空けよう』ということで、3は『寝る3時間前までには夕食を終えよう』ということです。
まず、夕食から朝食までにどうして12時間空けるかというと、主な理由の一つが長寿遺伝子を働かせるためです。長寿遺伝子というのは、飢餓状態になると発動されると言われている遺伝子で、私たちの体に元々備わっています。長寿遺伝子が作動すると、肌や血管、内臓など様々な器官が若く保たれますし、動物実験では寿命も延びることが報告されています」
長寿遺伝子を簡単に目覚めさせる方法が、空腹時間を長く取り、血糖値を低く保つことだとか。
「リコード法では、少なくとも12時間の間隔を空けるようにしています。難しいように思うかもしれませんが、夕食を18時~19時に食べて、朝食を6時~7時にとるようにすれば、12時間空けるのは意外と簡単ではないでしょうか」
なお、朝食を抜くことで12時間を空けようとするのは、さまざまな意味で勧められないという。
「朝にとるたんぱく質が、夜の眠りを誘うメラトニンというホルモンを合成するのに役立つので、質のいい睡眠のためにも朝食はきちんととるのが大事です。また、メラトニンは強力な抗酸化作用を備えているので、脳の老化を防ぐ意味でも欠かせません」
さらに、朝食で砂糖を入れたコーヒーや卵焼き、甘い果物やハチミツなどを入れた糖質が多いフルーツジュースを飲む人は多いが、今野先生によれば、止めた方がいいそうだ。
「空腹状態で糖分をとると、血糖値が急上昇しやすくなります。血糖値の乱れは、認知症の原因疾患の一つである脳血管性認知症だけでなく、糖尿病を始めとしたさまざまな病気や疾患に繋がりやすいので、避けるようにしましょう」