リコード法の食事のとり方は?
前々回から、アルツハイマー病の治療プログラム「リコード法」を紹介している。
リコード法は、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβというたんぱく質をためないことに注目した「生活習慣の改善や環境整備を実践していくプログラム」で、認知症を回避したい私たちにも、とても参考になる行動の指針が示されている。
生活習慣から改善を試みる、米国発の画期的なプログラムとは?~リコード法・前篇~
今回は、リコード法の中でも特に大事だとされている食事の考え方について、リコード法を治療に取り入れている新宿・ブレインケアクリニックの今野先生にお伺いする。
「認知症を回避したり、治療したりする上で、私が一番大切だと思っているのが食生活の改善です。私どものクリニックでは、これまでにもの忘れに悩む人たちや軽度認知症(MCI)の人たち200人ほどを診察してきましたが、みなさんに共通していたのが食事のとり方や栄養に関する問題でした」(ブレインケアクリニック・今野先生、以下同)
食事について、リコード法では、「ケトフレックス12/3」という独特の方法を取り入れている。
どういうものなのだろうか。
「名前の最初にある『ケト』と言うのは、脂肪を代謝する過程で発生するケトン体という物質のことです。ケトン体について詳しくは、後程ご説明しますが、リコード法ではケトン体を増やす食べ方を推奨しています。
続いての『フレックス』とは、『フレキシイタリアンダイエット』という言葉に由来していて、簡単に言うと、『緩やかな菜食主義』というような意味です。リコード法では、認知症を改善するために野菜中心の献立を勧めています。
最後の『12』と『3』はそれぞれ、時間を表しています。12というのは、『夕食から朝食までに12時間は空けよう』ということで、3は『寝る3時間前までには夕食を終えよう』ということです」
それぞれ、説明していただこう。
ケトン体を増やす食事とは?
まずは、ケトン体を増やす食べ方について。
「私たちは普段、食事でとった炭水化物をブドウ糖にしてエネルギーを得ています。しかし、アルツハイマー病になると、脳にブドウ体がとり込まれにくくなり、慢性的なエネルギー不足に陥ります。そのために脳の機能が低下してしまうわけですが、実は私たちの脳はブドウ糖だけでなく、ケトン体をエネルギー源にすることもできます。したがって、ブドウ糖をエネルギー源にできなくなっても、ケトン体をエネルギー源にして脳が働くようになり、認知症の症状を改善できる可能性があるのです」
なんと!
ケトン体については、低糖質ダイエットに挑戦した経験のある人なら、名前を聞いたことがあるかもしれないが、私もそんな知識があった程度で認知症の症状を改善する可能性があるものだったとはまったく知りませんでした。
ただ、おぼろげな記憶では、「糖質をとる量を減らして、油を積極的にとるといい」と聞いたことがあるような……。
「はい、そうです。ただし、油といっても、肉などに含まれる油からよりも中鎖脂肪酸の油のほうがケトン体を効率的に増やすことができます。そこで、治療では中鎖脂肪酸が主成分のココナッツオイルや中鎖脂肪酸そのものであるMCTオイルなどを取り入れます」
なるほど。カギは、「中鎖脂肪酸」ということか。