深い眠りを妨げない
続いては、「12/3」の「3」、「寝る3時間前までに食事を終える」ことについて。
「食べたものが胃腸で消化されるのに通常は2~3時間かかりますので、3時間経たないうちに寝ると胃腸は動き続けていますから、身体が十分休めずに眠りが浅くなってしまいます。前回お話しした通り、アミロイドβをためないためには、深い睡眠を取るのが大事です。認知症を回避するためにも、寝る3時間前までには食事を終えるようにしましょう」
食べてから寝るまでに時間を空けるのは、胃酸が食道に上がってくる「逆流性食道炎」を防ぐためにも大事だという。
とはいえ、現代日本においては、好むと好まざるにかかわらず、帰宅時間が遅くなったり、夜型生活を送らざるを得なくなったりして、結果的に夕食時間が遅くなり、朝食をあまり食べられなくなる人も多いのではないだろうか。
「朝にあまり食べられない人は、昼にしっかり食べることと、ナッツを常備しておき、おやつとしてこまめに食べることの2つを意識してはどうでしょうか。そうすれば夕食はたくさん食べなくてもすみますので、胃腸への負担を抑え、睡眠や血糖値への影響を最小限にすることができます」
なるほど、トライする価値がありそうだ。
具体的な食材は?
最後に、認知症を回避するために今野先生がオススメする食材と、その食材からとれる主な栄養素を先生のHPから抜粋して紹介しておこう。
○青魚――ドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸
○野菜や果物――ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB群、ポリフェノール、食物繊維(注:果物は糖分を含むため、控えめに)
○緑茶、赤ワイン、アーモンドの皮、クミン――カテキン、レスベラトロール、クルクミンなどのポリフェノール(注:アルコールに弱い人は無理に赤ワインを飲まないこと)
○ココナッツオイル――中鎖脂肪酸
○エクストラバージンオリーブオイル――オレイン酸、オレオカンタール
これらを毎日の食事で、しっかりととっていきたいところだ。
ここまで4回にわたって、リコード法を治療に取り入れている新宿・ブレインケアクリニックの今野先生にお伺いしてきた。リコード法は、アルツハイマー病を治療・回避するためのプログラムだが、その考え方は、私たちが健康な生活を送る上でもとても参考になるものだと思えた。
リコード法に関しては、初回のサブタイトルに「生活習慣から(認知症の)改善を試みる」とつけたが、知れば知るほど、私たちの生活そのものが、明日の(自分の)状態を作るのだと改めて思わされた。
認知症は、リスクとなる要因がこれまでにいくつかわかってきている。私たちは、それらに今どう対応できるのか? 引き続き、取材していきたい(続く)
医学博士。ブレインケアクリニック名誉院長、一般社団法人 日本ブレインケア・認知症予防研究所代表理事、所長。順天堂大学大学院にて、老化予防・認知症予防に関する研究を行い博士号を取得。大学病院や精神科病院での診療を経て2016年にブレインケアクリニックを開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、一人ひとりの患者に合わせた診療にあたる。また、認知症予防医療の普及・啓発活動のため2018年に日本ブレインケア・認知症予防研究所を設立。著書・監修に「最新栄養医学でわかった! ボケない人の最強の食事術(青春出版社)」など。最新刊『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう 認知症診療医に教わる最強の生活習慣』(世界文化社)が5月30日発売予定。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、日本抗加齢医学専門医。
カリフォルニア大学名誉教授・デール・プレゼデン博士が開発した認知症の治療プログラム。リコード法の公式サイト(APOLLO HEALTH https://www.apollohealthco.com)によると、日本の認定医は2024年2月末時点で5名。ただし、今野先生によると「リコード法に準じた食事法などを治療に取り入れる医師や医療機関は増えつつある」と言う。治療は自由診療となり、金額は医療機関により異なる。