――ところで、気象を予測する際に基になるデータとはどのようなものでしょうか?
(撮影:WEDGE Infinity編集部)
鬼頭氏:世界気象機関(国連の専門機関)のデータです。世界各地で毎日決まった時刻(日本では9時と21時)に、世界の各地の気象台で一斉にバルーンを上げて気温・風向などの気象状況を調べ、そのデータを世界気象機関で集約し、世界に配信しています。
日本の気象庁は独自の気象モデルにその情報を取り込んで気象予報を出しています。アメリカやヨーロッパも独自の気象モデルを持っています。どのようにデータを取り込むか、どのように雲が出来るかということを見積もる技術はそれぞれの国の気象モデルによって異なります。
ちなみに、世界で一番精度が高いのは、ヨーロッパ(ヨーロッパ中期予報センター)の気象モデルです。
――今後、台風はどのような傾向にあると予測されるのでしょうか?
鬼頭氏:まず、世界的に「数」と「勢力」がどうなっていくかというお話からしましょう。IPCCの評価では、世界全体での発生数は、同じ程度か減少するであろう、と予測しています。
台風の発生には、熱帯地域の温度の変化が関係します。大気が不安定(上空と地上の気温差が大きく、大気が混ざりやすい)だと台風が発生しやすいのですが、将来的には安定する(全体的に気温が上昇し、かつ気温差が小さくなり、大気が混ざりにくい)と予測され、発生数は減少する傾向にある、と予測されています。
ただ、大気全体が温まることで、大気に含まれる水蒸気量が増えるため、台風やハリケーンが発達するためのエネルギー源が増え、勢力の強い台風が発生すると考えられています。
次に、日本への影響ですが、重要になるのが「発生する場所」です。台風は北西太平洋上で発生しますが、将来的に発生場所が今より東寄りになると予測されています。そのため、台風の進路が全体的に東寄りになり、日本列島に接近および上陸する可能性は低くなると予想されます。