2024年11月22日(金)

ウェッジ新刊インタビュー

2013年11月25日

 ただ、東寄りの海上で発生するということは、太平洋上での移動距離が長くなる(=大気中の水蒸気を取り込みやすくなる)ため、台風の勢力が強まる可能性が高いと考えられます。

 日本から見ると、接近および上陸する台風の数は減少しますが、勢力の強い台風が襲来する可能性が高まる、ということです。

――なるほど。では、将来的に今回の台風30号のような大型台風が平均的なものになることは考えられますか?

鬼頭氏:何を平均と取るかにもよりますが、さすがに台風30号と同等の勢力の台風が平均となることは考えにくいですね。

――本書では、台風を含めてさまざまな気候や気象の問題について触れられていますが、この機会に是非読者に知っておいていただきたいことはありますか?

鬼頭氏:そうですね、よく「地球温暖化予測は不確実である(よく分かっていない)」、と言われますが、そうではなくて、“確実な要素と不確実な要素がある”ということを知っていただきたいと思います。

 例えば、確実な要素としては、世界全体での気温の変化傾向などが分かっています。逆に、不確実は要素としては、どれくらい雨が増えるのか、などはまだ不確実です。これを一括りにして、全てが不確実だと判断されてしまうのはとても残念です。

 気象科学というものは急速に進歩するものではなく、長い年月をかけて着実に進歩してきています。従って、現時点では不確実なものも、将来的に徐々に解明されていくと思われます。

――鬼頭先生は、IPCCの第1作業部会の執筆者として20年間IPCCに携わってこられましたが、20年前の予測と現状を比較するといかがでしょうか?

鬼頭氏:大きなところは間違っていないですね。例えば、気温の変化や雨の変化のパターンなど定性的には確実になってきたと思います。20年前の予測から大幅にずれていたら問題ですが、大事なところはきちんと押さえられているといえるのではないでしょうか。


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