11月8日、台風30号(ハイエン)がフィリピンを直撃し、甚大な被害をもたらした。日本の気象庁によると、台風の勢力は上陸時点で中心気圧895hPa、最大風速65m/s、最大瞬間風速90m/sとされ、上陸した台風としては観測史上例をみない猛烈なものであった。
日本でも今年の夏から秋にかけてこれまでになかったような猛烈な豪雨が各地を襲った。台風の勢力は強大化しているのか? また台風の発生数は増えていく傾向にあるのか?
「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)第1作業部会の執筆者として20年間IPCCに携わってきた鬼頭昭雄氏が、このたび『気候は変えられるか?』(小社刊)を上梓した。出版を機に、鬼頭氏に台風の現状について伺った。
――2013年は例年よりも台風が多く発生しているように思いますが、実際はどうなのでしょうか?
鬼頭昭雄氏(以下、鬼頭氏):気象庁のデータによると、11月14日現在、2013年は31個の台風が発生しています。1981年~2010年の30年間平均の発生数が25.6個なので、例年に比べると多いですね。ちなみに、観測史上最高発生数は1967年の39個です。
(鬼頭昭雄・ウェッジ社)
――今回の台風30号は甚大な被害をもたらしましたが、そもそも台風はどこまで予測できるのでしょうか?
鬼頭氏:まず、予測するには「気象モデル」を用います。「気象モデル」とは、気候を構成する大気、海洋などが気候システムの中で起こすことを物理法則にしたがって定式化し、計算機の中で擬似的な気象を再現しようとする計算プログラムのことで、これにさまざまな情報を取り込んで予測します。
台風の予測項目には「強さ」と「進路」がありますが、「強さ」を予測するのは非常に難しいです。さまざまな条件、例えば、雲がどのように組織化して発達するか、海面水温がどのくらいまで上昇するか、などの予測が難しいのです。そのため強さの予測も非常に難しくなります。「進路」は、基となる気圧配置や風向きがある程度予測できるので、こちらについては予測精度が上がってきています。
気象モデルの高解像度化が進めば、将来的には今より精緻な予測が可能になるでしょう。