2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月15日

 彼らは会社、大学、中国ビジネスパートナーの三者間で研究プロジェクトを立ち上げた。このビジネスパートナーは、実際には中国国家安全部(MSS)が設立した隠れ蓑だった。

 そのプロジェクトの第一号は、軍用船の推進システムにおいて重要な役割を果たす「最先端の機械部品に関する研究だった。「逮捕されたとき、被告人たちは、中国の海上戦闘能力拡大を目的とした研究プロジェクトについて交渉を進めていたらしい。

 検察官によると、このグループはまた、MSSの資金で購入した軍事用途の特殊レーザーを、申告せずに中国に輸出した。このような機器を許可なくEUから輸出することは違法である。

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増える中国の諜報活動への指摘

 ヨーロッパにおいて中国の諜報活動に関する記事が増えている。4月22日にドイツで公表されたこの3人の逮捕に加え、翌23日には、独連邦検察庁は、欧州議会議員(極右政党AfD)の側近1人を中国の秘密情報機関の職員であるとして逮捕した。

 英検察当局も、4月22日、中国に機密情報を流していたとして、男性2人を逮捕した旨公表した。英国では昨年9月にも、英議会調査員2人をスパイ容疑で逮捕している。また、昨年末、ベルギー当局は極右政党のメンバーを中国の利益のために働いていた容疑で逮捕した。

 これらに対し、中国は、①中国のスパイ脅威論は全くのでっち上げだ、②スパイ・リスクを利用した反中政治工作はやめるよう希望する等と反論している。このような中国の反論を聞いた西側諸国の大多数の人は、中国の「もっともらしい言葉と現実の行動との間の乖離」に白々しさを感ずるのみであり、対中不信感をさらに増幅する要因になっている。

 今般の一連のスパイ逮捕の報道は、「安全保障や民主主義を守る観点から対中警戒感を緩めては駄目だ」という治安当局から各国経済界および親中政治家に対する警告として絶妙のタイミングで行われた。


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