それでも世界へ投資を呼びかける中国
中国は経済不振に直面する中、習近平総書記が先頭に立って、日米欧企業の幹部に対して投資増を呼びかけ、経済分野の関係強化に向けて外国への働きかけを強めている。中国で利益を上げてきた企業経営者、また、中国が一番の貿易相手国である国の指導者(ドイツ、日本等)にとって、中国との経済関係強化には抗しがたいものがある。
今年1月、日本の経団連・日中経済協会・日本商工会議所の3団体の代表約210人が訪中し、李強首相等と会談した。3月にはビジネスフォーラム出席のために北京を訪れていた米企業経営者グループ10数人と習近平氏が自ら懇談した。
4月、シュルツ首相が国賓として訪中した際、BMW、メルセデスベンツなどの多くの企業トップが同行した。5月、習近平氏の欧州訪問(仏、セルビア、ハンガリー)には、多数の中国企業の同行がある。
忘れてならないことは、経済的利益は重要であるが、中国の「戦略目標」は、自由(表現、報道、宗教)と「法の支配」を尊重する「既存の国際秩序」を「力により変革」し、中国覇権を確立することである。今般のように中国が一時的に経済を念頭に「戦術」を軟化させ、甘言をささやくことに惑わされてはならないだろう。諜報や政治・安全保障分野における「具体的行動」を見極めることが不可欠である。
日本として、経済分野における対中依存度を下げること、半導体等の機微な技術の保護、経済安全保障に関するセキュリテイ・クリアランスにおいて前進は見られるが、「防諜の観点」からは更なる改善が必要である。具体的には、①「スパイ防止法」の制定、②サイバー攻撃に対応する「法整備」と政府の体制強化、③日本国内にある中国の海外警察および孔子学院の廃止、④中国の「国家情報法」や「国防動員法」への対応についての検討である。