2024年6月20日(木)

BBC News

2024年5月23日

ジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員

パレスチナ自治区のガザ地区で戦闘と苦難が続き、ヨルダン川西岸地区で暴力が拡大している現状では、パレスチナの人々が自分たちの国家を獲得する見込みは、かつてないほど薄くなっているように見えるかもしれない。

こうした中、欧州の数カ国が22日、パレスチナ国家を正式に承認すると決めた。だがこれによって、パレスチナの持つ国家樹立の野望の前に、依然として大きな壁が立ちはだかっているという現実が克服されるわけではない。

それでも、アイルランド、スペイン、ノルウェーによる国家承認の宣言は、イギリス、フランス、ドイツなど他の欧州国家に対し、後に続いてパレスチナの自決を支持せよという圧力をかけることになるだろう。

「これは極めて重要なことだ」と、あるアラブ国家の外交官は話した。「イスラエル政府が聞く耳をもたないことに対する、欧州のいら立ちを反映するものだ」。

「そして、EU(欧州連合)に後に続くよう圧力をかけるものだ」

一方、イスラエルの閣僚らは今回の動きについて、ハマスを勇気づけ、テロに見返りを与えるものだと批判。交渉による解決の可能性をいっそう小さくすると主張している。

すでに大半の国が承認

パレスチナ国家については、ほとんどの国(139カ国ほど)が正式に承認している

今月10日の国連総会では、国連加盟193カ国のうち143カ国が、パレスチナの国連正式加盟に賛成した。正式加盟は国家にしか認められないことだ。

国連においてパレスチナは現在、拡大版オブザーバーのような地位にある。議席はあるが、投票権はない。

一方、アラブ連盟やイスラム協力機構など、さまざまな国際機関からもパレスチナは承認されている。

欧州の少数の国々もすでにパレスチナ国家を承認している。ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、チェコ、スロヴァキア、ブルガリアは1988年に認めた。スウェーデン、キプロス、マルタも承認している。

しかし、ヨーロッパの多くの国々、そしてアメリカは、中東での紛争の長期的な政治的解決の一部としてのみ、パレスチナ国家を承認するとしている。

これは「二国家解決」と呼ばれる。イスラエル人とパレスチナ人の双方が、国境のある国家をそれぞれもつことに合意するというものだ。

欧州諸国とアメリカは、いつパレスチナを国家として承認すべきかをめぐり、意見が分かれている。

アイルランド、スペイン、ノルウェーは、和平への政治プロセスをスタートさせるために、今すぐ承認するとしている。現在の危機を持続的に解決できるのは、当事者双方が何らかの政治的地平を目指せるときだけだと主張している。

これら3カ国の決定は、パレスチナ人への支持をもっと示すよう求める、それぞれの国の政治圧力に応えるものでもある。

欧州諸国の変化

かつて、多くの西側諸国はパレスチナの国家樹立について、最終的な和平合意の「賞品」であるべきだとの立場を取っていた。

しかし、イギリスのデイヴィッド・キャメロン外相や欧州のいくつかの国はここ数カ月、そうした立場を変更。政治的解決の機運を高めるため、パレスチナ国家の承認を早める可能性があるとしている。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2月に、「パレスチナ国家の承認はフランスにとってタブーではない」と発言。

フランスは今月の国連総会の採決で、パレスチナの国連加盟を支持した。

アメリカは内々に、この問題について欧州の同盟国などと協議している。だが、慎重な姿勢を保っており、国家承認が現実的にどんな意味をもつのか、より明確に見極めたい意向だ。

こうした状況から、パレスチナ国家の承認をめぐる舞台裏での重要な議論は、保留している国々がいつ承認に回るかということになる。イスラエル人とパレスチナ人の間で正式な和平交渉が始まったときなのか、イスラエルとサウジアラビアが国交を正常化したときなのか、イスラエルが特定の行動を取らなかったときなのか、あるいはパレスチナ人が特定の行動を取ったときなのか。

これは言い換えると、承認を保留している国々は、自分たちの承認を、外交的成果が達成される大々的な瞬間にしたいと考えているということだ。

「これは西側諸国が切ることになる大きなカードだ」と、西側当局者の1人は言った。「私たちはそれを手放したくない」。

問題は、パレスチナ国家の承認は、それに付随する重要な問題に取り組まなければ、象徴的な意味しかもたないことだ。

国境はどうあるべきか。首都はどこに置かれるべきか。実現のために双方はまず何をすべきか。

これらは、何十年もの間、満足のいく合意も、回答すらも得られていない難問だ。

現時点で、ヨーロッパのさらに数カ国が、パレスチナ国家は存在すべきだと考えている。

支持者はこの動きを応援し、反対者は非難するだろう。

パレスチナ人の厳しい現実は変わりそうにない。

(英語記事 The impact of recognising a Palestinian state

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c2887ldgxx7o


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