ある中国の電気自動車メーカーは、ハンガリーを生産拠点とする計画を持つ。電気自動車問題を巡る妥協で中国企業が欧州での生産を増やすことになればハンガリーは受益者だ。
しかし、セルビアとハンガリー訪問で習は、他のほとんどの欧州諸国が彼の訪欧は友好訪問だと納得するのを困難にした。セルビアはEUとNATOの部外者で、ハンガリーは両方を内側から貶めており、両国共、親露国だ。習近平帰国直後のプーチン訪中は中国の真の意図への欧州の懸念を一層深める。
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地力で勝る西側がすべきこと
西側(自由民主主義諸国)がやるべきは、意味のある友人を増やすことだ。
中露両国は、グローバル・サウスの「支持」を自慢するが、結局、一般的で心情的な支持を超えた意味のある協力相手は、中露夫々と北朝鮮、イラン以外には見当たらない。少し広げても新興5カ国(BRICS)メンバーの南アフリカ、ブラジル、インドだが、南アフリカを除けば、インドはクアッド(日米豪印)の一員でもあり、ブラジルもBRICSへの新規加盟国の選択に際し過度に反米にならないように一定のブレーキを掛けたようであり、同床異夢だろう。
一方、西側には、主要7カ国(G7)に加え、アジアでは韓国、豪州、欧州では、EU/NATO加盟国がいる。NATOは、スウェーデンとフィンランドの加盟で、益々強力・広範になった。
しょせん、活用できる「地力の総計」が、中露と比べ物にならない程大きい。もちろんその一方で、やるべきことは多い。
第一に、内部分裂しないことだ。いかにあからさまに見えようが、習近平が既述の3カ国を訪問先に選んだのは、地力で劣り、相手の分断を図ることを優先せざるを得なかったからだろう。
第二に、西側諸国相互の連携を強めることだ。米・欧・日本他のアジア自由主義勢力の3つの極の間で従来連携が最も弱かったのは、日本他のアジア自由主義勢力と欧州だが、近年大きな改善が見られる。
本年のリムパック(環太平洋合同演習)には、ドイツ海軍のフリゲート部隊が参加するが、それに加えて、フランス、イタリアも参加を予定しているようで、一部はリムパック後に南シナ海を航行する。また、独、仏、スペインは、同時に多数の戦闘機をアジアに派遣し、日米豪と演習を行う。ここまで欧州のアジア方面への展開が幅広く頻繁に行われるようになった。
本年は、7月に大西洋国家であると同時に太平洋国家でもある米国でNATO首脳会合が行われる。日本の岸田文雄首相もパートナー国として招待されている。