2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年5月27日

 2024年5月6日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「習近平は欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)の分断を模索」と題するギデオン・ラックマン同紙外交コメンテーターによる論説を掲げ、習近平の訪欧の目的と限界について論じている。

中国の習近平国家主席(代表撮影/ロイター/アフロ)

 約5年振りの習近平の訪欧の訪問先は、フランス、セルビア、ハンガリーである。この選択は、戦略的・経済的にNATOとEUの団結を崩したい中国にとっては完璧である。

 欧州は米国から戦略的に独立すべきとのフランスの主張は、中国には魅力的だ。また、マクロン大統領が昨年の訪中の帰路に、欧州は台湾を防衛する利益はないと述べ、その後、NATOの東京事務所開設にマクロンが反対したことにも中国は感謝している。

 NATO諸国をアジアから締め出し、米国がアジアと欧州の同盟国を連携させるのを止めるのは、中国の外交政策の鍵となる目標だ。ただ、中国はマクロンを過大評価している。彼は最近は対露強硬で、フランスがNATOや米国と距離を置くには現実的限界がある。

 セルビア訪問は、コソボ戦争時のNATOによる駐セルビア中国大使館爆撃事件25周年に呼応し、NATOは攻撃的で危険な組織だとの主張を可能にする。習の反NATO発言は、ロシアが国境で戦争を行っている最中、欧州のNATO諸国の反感を買うだろう。

 ハンガリーのオルバンはNATO中、最も親露、親中だ。EUの各種対中非難決議を阻止し、中欧大学を追い出し復旦大学を招請した。

 最近訪中で同国外務大臣は、中国には電気自動車過剰生産能力があると言う考えを酷く批判した。ハンガリーには直接的利益がある。


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