2024年7月13日(土)

科学で斬るスポーツ

2013年12月2日

なでしこの強さは、
「統一・一貫性」と「同期発火」

 あまりにも長く引っ張ってしまったが、ここから本題の、なでしこジャパン強さの話に戻る。脳科学の視点から、なでしこに迫ったテレビ番組が、7月20日NHKBS11で放送された「データマン」。この番組によると、W杯、五輪で、なでしこジャパンが戦った全21試合において、ボールを奪ってからシュートを打つまでは平均11.22秒。対戦相手は14秒だから、いかに速攻、パスワークがよいかが伺える。

 この番組の中で、林教授はこうした速いパスワークをこなす選手らの「空間認知力の高さ」を指摘する。特に澤穂希選手の能力はすごいという。空間認知力は、目まぐるしく動く選手の配置を瞬時に立体的に位置づける能力で、わずかな選手の動きを感じる「統一・一貫性本能」が関わってくる。

 その上で、選手同士が互いの動きを予知し、まるで同じリズムで動く「(脳の)同期発火」が起きていると分析する。同期発火は、離れた脳の領域が同時に信号を送り出す脳現象のことを言うが、林教授は、これと同じ現象がチーム、組織でも起こっているとし、同期発火と指摘する。

 その象徴的なシーンがW杯準々決勝のドイツ戦。延長後半108分、ディフェンスが蹴り出したボールが、ワンパスを経て、澤に渡った。空間認知能力の高い澤は、相手DF裏の空きスペースを見逃さなかった。そして縦パス。まるで示し合わせたように縦パスの先に走り込んだ丸山桂里奈に渡り、ゴール。これが決勝点になった。

 「前に走ったら、きっと誰かが蹴ってくれると思っていた。走り出すタイミングを意識した」と丸山は語る。その上で、「蹴るときはゴールは見ていなかった。(一筋の)光が見えた。蹴ることだけに集中できた。ゴールを見ていたら失敗していた」と振り返る。

 これが林教授の言う「同期発火であり、心が一つになったプレー」だ。同期発火は、相当の練習が必要であるという。林教授によれば、同期発火に関係する、空間認知能力を上昇させる練習はいくつもあるという。その一端をまとめたのが図3だ。


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