2011年3月11日に起きた東日本大震災による影響をきっかけに、その在り方について見直されてきた原子力発電。電力事業者の平等化を図る目的で2020年に施行された、発送電の法的分離。開始から2年を超えたガソリン補助金制度――。
国民の生活に大きく影響する電力・エネルギー業界にはさまざまな動きがあるが、限りある資源・環境汚染・価格高騰など、課題が山積している。われわれが生きていくためには切り離せない電力・エネルギー業について、必読の記事を集めました。
国内産業の問題を提起する人気記事の中から、<電力・エネルギー業>をテーマにした7本を編集部が厳選してお届けします。
<目次>
1:<化石燃料はいつ尽きる?>石炭・石油・天然ガスの原料から生産国・埋蔵国まで解説(2023年10月16日)
2:【再生可能エネルギーをめぐる利権と汚職】国家プロジェクトで正常な市場競争が阻害されたのはなぜか(2023年8月24日)
3:<どうする?日本のエネルギー源>化石燃料か再エネか、数字で見る各国の資源事情から戦略を考える(2023年6月8日)
4:「洋上風力と水素製造で地域創生」の幻想 雇用は生まれず、かさむ発電コストは消費者負担、水素の社会は儚い夢か(2024年2月21日)
5:<極端な中東依存でガソリン価格はどうなる?>油断できない紛争の影響 数字で読み解く世界の石油輸出入事情(2023年10月26日)
6:【ガソリン補助金が大問題である理由】エネルギー価格高騰への補助金対応は、開発途上国の政策だ(2023年9月12日)
7:【6兆円の血税投入という衝撃】政府はガソリン補助金をいつまで続けるつもりなのか?補助金投入で失う産業競争力、脱炭素との逆行も(2024年4月22日)
1:<化石燃料はいつ尽きる?>石炭・石油・天然ガスの原料から生産国・埋蔵国まで解説(2023年10月16日)
限界効用理論で知られる英国の経済学者ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズが、世に知られたのは1865年に出版した「石炭問題」でした。
ジェヴォンズは、英国の石炭消費量が産業革命以来年率3.5%で増加していたので、「出版当時の石炭年産量約1億トンは、100年経てば約26億トンに達する。やがて石炭が尽きる」と指摘しました。
石炭が尽きれば産業を支えるエネルギーはなくなり、産業革命前に産業と生活は逆戻りするはずとし、英国の石炭の埋蔵量は当時90億トンでしたので、100年以内に成長はなくなり人口増も止まると、ジェヴォンズは主張しました。
ジェヴォンズは水力、風力、潮力などの再生可能エネルギー(再エネ)も考えましたが、発熱量が足らず石炭を代替できないと結論付けました――。
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2:【再生可能エネルギーをめぐる利権と汚職】国家プロジェクトで正常な市場競争が阻害されたのはなぜか(2023年8月24日)
自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟(以下、再エネ議連)の事務局長を務めていた秋本真利議員が東京地検特捜部による強制捜査を受けた。容疑は贈収賄で、有力な風力発電ベンチャーとされる日本風力開発が計6000万円を秋本議員に支払ったとするもので、日本風力開発は容疑を認める姿勢に転じたようである。
具体的な容疑事実は、日本風力開発が洋上風力の国家プロジェクトの公募制度を自社に有利なものに改変することを画策し、その意図を受けた秋本議員が国会質問を通じて所管官庁である経済産業省へと働きかけたというものである。
容疑が事実であるならば、再エネ議連の国策と世論の追い風を受けた「絶対的正義」という過信が招いたものかもしれない。その過信を醸成したのは、再エネと言えば無批判で支持する世論であり、再エネを持て囃してその欠点をきちんと報道してこなかったマスメディアだったのではないだろうか――。
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3:<どうする?日本のエネルギー源>化石燃料か再エネか、数字で見る各国の資源事情から戦略を考える(2023年6月8日)
エネルギー、化石燃料の賦存は世界の中で偏在している。石油資源に恵まれる中東諸国、石炭から天然ガスまで豊富に持つ米国、豪州のような国もあれば、日本、韓国のように資源がなく、化石燃料の輸入に依存せざるを得ない国もある。
世界の多くの国は、エネルギーを自給することが叶わず輸入に依存せざるを得ない。中には、中国のように経済発展に伴い国内資源だけでは需要を賄うことができなくなり、石油、石炭、天然ガス、すべての化石燃料の輸入が必要になった国もある。
世界が発展するに連れ、エネルギー消費量は増加し貿易量も伸びた。エネルギーが途絶すれば、経済も家庭も死に絶えるのだから、エネルギーを輸出する国の影響力は拡大する一方だ。つまり、エネルギーの覇権を握れば世界を動かすことも可能だ――。
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4:「洋上風力と水素製造で地域創生」の幻想 雇用は生まれず、かさむ発電コストは消費者負担、水素の社会は儚い夢か(2024年2月21日)
先月中部地方で講演の機会があった。講演の中で水素の需要と供給についても触れたが、講演後の質疑応答の際、地方議員の方から次の質問があった。
「地元では洋上風力設備を設置し、その電気を利用した水の電気分解により水素を製造、さらに需要地まで輸送する事業が検討されている。地元での説明では良い事業としか聞いていなかったが、今日の講演で初めて事業の将来はあまり明るくないとの印象を受けた。事業の評価はどうだろうか」
過疎に悩む地域は、発電事業と水素製造により地域で雇用を生み過疎に歯止めをかけると意気込んでいるのだろうが、残念ながら洋上風力と水素製造による地域振興は難しい。
二酸化炭素(CO2)を排出しない洋上風力発電の電気から作る水素は、グリーン水素と呼ばれ脱炭素に必要とされる。しかし、事業については疑問だらけだ――。
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「洋上風力と水素製造で地域創生」の幻想 雇用は生まれず、かさむ発電コストは消費者負担、水素の社会は儚い夢か
5:<極端な中東依存でガソリン価格はどうなる?>油断できない紛争の影響 数字で読み解く世界の石油輸出入事情(2023年10月26日)
50年前の1973年10月に第4次中東戦争が始まった。エジプト、シリアを支援する中東の産油国はイスラエルを支持する米国、オランダへの原油の輸出禁止を打ち出し、原油価格も数カ月で4倍になった。第一次オイルショックだ。
当時、安価な中東産原油に大きく依存していた日本、欧州の主要国は、エネルギー供給源の多様化、脱石油に乗り出した。
1973年時点で日本の一次エネルギー供給の75%以上は石油、発電の80%近くも石油に依存していた。
オイルショック以降、燃料用石炭の輸入が始まり、液化天然ガス(LNG)と原子力発電の利用も本格化した。最近では太陽光を中心とした再生可能エネルギーの利用も拡大している。日本のエネルギー供給は多様化された――。
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6:【ガソリン補助金が大問題である理由】エネルギー価格高騰への補助金対応は、開発途上国の政策だ(2023年9月12日)
エネルギー価格の高騰に対して、日本ではエネルギー関連の補助金で乗り切ろうとしている。この補助金は2023年9月末までで6兆円、12月まででさらに1.2兆円かかるようである(「ガソリン15年ぶり最高値」日本経済新聞2023年8月31日)。安易に補助金を支給し続けていて良いのだろうか。
これは長期的にはまずい効果をもたらすと言える。なぜなら、多くの人が指摘していることだが、エネルギー価格の高騰は、エネルギーが足りないことを示すものだ。あるいは二酸化炭素(CO₂)の排出を抑えて気候変動を抑制しなければならないのに、価格を抑えていたら、これまで通りエネルギーを使って良いというシグナルを送ることになる。
1970年代初期のエネルギー価格高騰では、日本はエネルギー価格の上昇をそのまま価格に転嫁させていた。その結果、日本は個々の産業でエネルギー節約が進み、また、エネルギー多消費型産業が縮小し、エネルギー節約型の産業が拡大し、全体として省エネ型の産業構造となった。70年代には合理的な政策を採用できたのだが、現在は出来ていない(本欄「東京都の「おこめクーポン」 なぜ物価対策に現物支給なのか」2023年3月29日、でもこのことを解説している)――。
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7:【6兆円の血税投入という衝撃】政府はガソリン補助金をいつまで続けるつもりなのか?補助金投入で失う産業競争力、脱炭素との逆行も(2024年4月22日)
かつて途上国を旅すれば、物価を安く感じた。もちろん外国人用のレストランなど別体系の料金も多くあるが、タクシー料金、街中で買うミネラルウォーターなど、多くのもの、サービスの価格を安く感じた。
今日本に来ている外国人は、かつて私たちが途上国で感じた物価の安さを実感しているに違いない。昨年米国出張時にシカゴの電車の駅で購入したミネラルウォーターは5ドルを超えていた。日本はミネラルウォーターが1ドル以下で買え、10ドル以下でファストフードではなく、レストランのランチが食べられる国なのだ。そう日本は物価では途上国並になってきたのだ。
失われた30年間収入と需要は伸びず、規制改革などにより供給は減らなかったのでデフレになった。最近の円安により輸入品の価格は上昇しているが、その典型はガソリン価格だ――。
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【6兆円の血税投入という衝撃】政府はガソリン補助金をいつまで続けるつもりなのか?補助金投入で失う産業競争力、脱炭素との逆行も