2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月6日

 5月6日付けウォールストリート・ジャーナル紙が、ロシアが戦術核兵器を用いた演習を予告した背景を分析する解説記事‘Russia to Carry Out Exercises for Tactical Nuclear Weapons’を掲載している。概要は次の通り。

(Tomas Ragina/gettyimages)

 ロシアのプーチン大統領は、軍部に対して、戦術核兵器使用の即応性を試すよう指示した。ロシア大統領府によれば、この演習は、ウクライナをもっと支援できるとの示唆を含めた西側関係者の最近の発言への対応である。

 ロシア大統領府のペスコフ報道官は、フランスのマクロン大統領が述べた、「ウクライナが敗北に近づくならば、西側は地上部隊をウクライナに送ることを検討すべきだ」との発言を取り上げた。ロシア大統領府は、英国のキャメロン外相が述べた、「ウクライナは英国から提供を受けた長距離射程の兵器をどのように使用するかを決めることができる」との発言を問題視した。

 プーチン大統領は、これまで何度となくウクライナにおける戦術核兵器の使用を示唆しており、西側の政府関係者は、ウクライナに対してどのような兵器の供与を行うかを検討する際に、核エスカレーションのリスクについて言及していた。

 プーチン大統領は、大統領としての五期目を開始するに先立ち、マクロン大統領の発言に言及しつつ、ロシアは脅威にさらされていると感じる際には核兵器を用いる用意があると述べた。

 国連軍縮研究所の専門家によれば、今度のロシアの演習は、このところの西側関係者の発言を踏まえ、ウクライナの支援国に対してロシアとしては手中にある手段をすべて用いる用意があるとのメッセージを伝える意図がある。ロシアは、今次演習において、戦術核兵器を保管庫から取り出して、運搬手段に搭載するかもしれないし、あるいは、実際に核兵器には手を触れずに弾道ロケットの即応性を試すだけかもしれない。

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