Economist誌4月27日号の社説‘America’s latest aid will give Ukraine only a temporary reprieve’が、4月20日に米国議会下院が可決して成立することとなった米国の新たなウクライナ支援は一時的な猶予を与えるものに過ぎないことを論じ、それゆえ欧州は急ぎウクライナ支援の強化に取り組むべきである、と指摘している。要旨は次の通り。
法案はウクライナに610億ドルの軍事・財政援助を提供するとともにイスラエルと台湾のためにも資金を提供する。この支援がなければ、ウクライナは夏の初めにも予想されるロシアの新たな攻勢によって更なる領土を失いかねない状況に当面したであろう。610億ドルによってウクライナは何とか持ちこたえようが、残念ながら「溺れるウクライナ」にとり岸辺からは遠いままである。
米国の支援パッケージは前線に直ちにインパクトを持つであろう。昨年秋に資金が枯渇し始めて以来、死活的に重要な補給、特に、砲弾の欠乏はますます差し迫ったものとなっていた。
しかし、ウクライナに砲弾が到着するに従い、ロシアは兵や戦車を新たな攻勢のために集結させることの危険が増したことを知るであろう。死活的に必要なドローンと迎撃ミサイルの供与には時間を要するが、いずれロシアは空域、特に前線の空域で支配を失うこととなろう。
ただし、幾つかの厳然たる事実のゆえに、このニュースは割引くことを要する。第一に、新たな支援パッケージはウクライナの防衛能力を強化するであろうが、ロシアに占領された領土(領土全体の18%に当たる)を取り返すには十分でない。昨年夏の反転攻勢の失敗の教訓は、領土を奪還することは難事だということである。
ドローンと人工衛星が、戦場を透明なものとし、戦場の霧を取り払い、集結した兵と装甲車両を破壊することを容易にした。ウクライナにとっては今や膠着状態の継続がより現実的な期待である。
第二に、法案可決に到るまでの米国議会におけるバトルはこの先予想されるトラブルの徴候である。610億ドルは戦争開始以来20カ月に米国がウクライナに費やした額にほぼ相当する。従って、2025年後半までに今回の新たな資金は底をつくかも知れない。
仮に、資金が残っているとしても、それまでにトランプが大統領になっているかも知れず、彼はその資金を使わないと決定するかも知れない。バイデンが依然大統領であったしても、議会におけるうんざりさせる戦いを来年再び戦う必要があろう。今回の支援パッケージが最後になるかも知れない。
それゆえに、欧州の指導者は米国の支援を一時的な猶予以上のものと見ることは間違いであろう。この戦争は何年も長引くかも知れない。