2024年12月4日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月3日

 ワシントンポスト紙コラムニストのマックス・ブートが、ロシア軍が5月10日に突如としてハリキウ州に侵攻を開始した事態について、その成功の背後にある要因を分析する論説‘Why Russian troops are suddenly able to advance toward Kharkiv’を5月15日付け同紙に書いている。要旨は次の通り。

(artas/gettyimages)

 ロシア軍はハリキウ州で予想されていなかった越境攻撃に出た。ほんの2、3日でロシアの約5つの大隊がほぼ5マイル侵攻し、相当数の村を奪取し、開戦以来最速かと思われるロシア軍の進撃にウクライナ軍は動揺をきたすこととなった。

 何故、ロシアはこの突如の成功を手にしつつあるのか? その説明は、ロシアの軍事的な力量およびウクライナと米国の失策の組み合わせにある。

 ロシア軍は、開戦当初以降、その戦闘のパーフォーマンスを改善した。彼等は戦場の条件に適応しつある。

 ウクライナのドローンや砲撃に容易に標的とされる戦車や装甲車両に頼るのではなく、オートバイで迅速にウクライナの防衛線に向けて進撃している。ウクライナのドローンとロケットによる攻撃を電子戦システムで妨害する一方、滑空爆弾でウクライナの防衛線を粉砕している。

 他方、ウクライナ軍は米国の支援が長期間遅延したことで酷く苦しめられた。砲撃ではロシア軍に対し10対1で劣勢に立たされ、防空兵器は払底した。前線の兵に十分な防空支援を与えられかったことは、ロシアが初めてその航空戦力を相当程度まで使うことを可能にした。

 ロシアは、米国がロシア領内の軍事目標を米国の武器で攻撃することを禁じていることにつけ込むことも出来た。この制限が、僅か2、3マイル先に集結しつつあるロシア軍を攻撃することを不可能にした。


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