2024年7月15日(月)

デジタル時代の経営・安全保障学

2024年6月3日

国籍の取り扱い

 一番目の項目として「国籍」を調査項目としているが、仮に国籍が中国もしくは中国からの帰化であった場合は、どう判断されるのだろう。中国には、有事の際に世界中の民間の中国人を動員できるとするほか、特許を無承諾で徴用できるとする「中国国家動員法」が2010年から施行されているほか、17年には、「いかなる組織および個人は国の情報活動に協力する義務を有する」とする「中国国家情報法」が施行されている。

 この問題に対する懸念は昨年5月29日に開催された「経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議」の第6回で、有識者から提議されただけで、議論された形跡はない。

 主要7カ国(G7)をはじめとする米国や欧州各国がセキュリティ・クリアランス制度を法制化した時点では、国民にスパイ活動を義務付けたような国は存在しなかったために参考にできる海外の条文は見当たらない。新たにセキュリティ・クリアランス制度を法制化しようとするならば、この問題について十二分に議論されて然るべきだっただろう。

 高市早苗経済安保担当相は「評価対象者が外国籍である事実は、考慮される要素の一つ。最終的には調査結果の総合評価で判断される」としているが、外国籍の人材が増えつつある中で、異様と思える法律の施行下にある中国人を制御できる方策が求められる。

「性癖」や「渡航歴」に関する調査

 「性癖」や「渡航歴」については調査項目から外されているのが気がかりだ。

 諜報活動において、ハニートラップは協力者を得るための最も典型的な手口で、頻繁に利用されている。過去には国のトップでさえハニートラップにかかったと噂されている。

 異性によるハニートラップはもちろん、同性愛者に耽(ふけ)る姿を写真にとられ、脅迫されて協力者に成り果てた官僚の例もあり、「性癖」は重要な評価項目として盛り込む必要があったのではないだろうか。「性癖」については米国のセキュリティ・クリアランス申請書類(SF86)に該当する項目はないが、調査員からの質問には必ず含まれている。

米国で最も重視される外国との接触歴

 また、頻繁に特定の国との往来をしていることは、すでに連絡員や工作員と接触している可能性が高く、「渡航歴」はパスポートで確認できる最も評価しやすい項目である。

 せめて「渡航歴」ぐらいは、評価項目に入れるべきではないだろうか。また、米国のセキュリティ・クリアランスでは、最も重視されているのが外国との接触歴だ。SF86と呼ばれる申請書類にこの種の質問が多数見られる。

 過去7年以内に申請者自身や配偶者や同居人などが外国人と接触したかどうか、接触した場合は外国人の名前とおおよその接触日付を記載しなければならない。また、接触した方法は、直接なのか書面なのか、電話や電子メール、チャットなどの電子的方法なのか。頻度は毎日、毎週、毎月、四半期ごと、毎年なのか。その外国人との関系はビジネス上、個人的、義務的またはその他なのか。さらに申請者自身あるいは配偶者や同居人などの海外活動や海外銀行口座や資産についての質問が15ページ以上に渡って記載しなければならない。

 また、審査では、国籍、生年月日、出生地、現住所、雇用主および雇用主の住所、この外国人が外国政府、軍隊、安全保障、防衛産業または諜報機関に所属しているかが質問される。


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