経済安全保障にかかわる重要情報へのアクセスを国が信頼性を確認した人に限定する「セキュリティ・クリアランス(適格性評価)制度」に関する法案が参議院本会議で、自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決された。しかし、セキュリティ・クリアランス制度の詳細は何も決まっておらず、拙速感は否めない。
前日の参院内閣委員会に出席した岸田文雄首相は「(重要経済安保情報に)指定の対象は政府が保有する情報で、民間が保有する情報を一方的に秘密指定するものではない。また、情報を取り扱うことのない一般の事業者や個人に対して、信頼性の確認を求めるものでもない」と、セキュリティ・クリアランス制度の下で情報統制が行われることを懸念する反対派に配慮した答弁を行っている。
「重要経済安保情報」とは何か
そもそも「重要経済安保情報」とは何なのか。この法律では、第三条(重要経済安保情報の指定)として「行政機関の長は、当該行政機関の所掌事務に係る重要経済基盤保護情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを重要経済安保情報として指定するものとする」と定めている。定義自体の抽象度が高く、狭義にも受け取れるし、広義にも受け取れる。要は行政機関の長の判断次第ということか。
第十二条では(行政機関の長による適性評価の実施)として、「行政機関の長は、次に掲げる者について、その者が重要経済安保情報の取扱いの業務を行った場合にこれを漏らすおそれがないことについての評価(以下「適性評価」という。)を実施するものとする」として次の7項目を挙げている。
二 犯罪及び懲戒の経歴に関する事項
三 情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項
四 薬物の濫用及び影響に関する事項
五 精神疾患に関する事項
六 飲酒についての節度に関する事項
七 信用状態その他の経済的な状況に関する事項
詳細な手続きがどのように行われるかに興味が惹かれるが、第七項以外は、評価対象者本人に告知の上、本人の同意を得て行うとある。